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The wing which died surely turns into love
馬鹿なコトをした
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何度となくイかせた後、月香は、幸せの渦の中へと身投げるように意識を手放した。
月香が抱く音里への罪悪感が、少しでも薄まればと思ったのに。
ただ、オレの胸の痛みが増すだけだった。
脱ぎ捨てられた衣服の中から、下着だけを拾い上げ、バスルームへと足を向けた。
身体は満たせても、心は満たせない。
いつもは、失神するほど求めては来ない。
ただ、苦痛と恐怖が渦巻く胸中が見えるだけ。
なのに、今日は、伝わる感情は、幸せなもので。
身体の辛さも、苦しさも、凌駕するほどに充足感に溢れていた。
月香の心を満たせるのは、音里だけ……なんだ。
好意とは…恋する想いとは、ここまで人を幸せにするものなのか……。
愛する人に求められる幸せは、すべての苦痛を忘れさせていた。
苦痛も恐怖も感じられないほど、そこは幸せに満ちていた。
月香の幸せは、オレの痛みとなり、返ってきただけだった。
バスルームの壁に額を預け、はぁっと重たく息を吐く。
意外なほど簡単に、月香は、オレの呪縛に掛かった。
寝入っていたからか。
昨日の疲れが、残っていたからか。
油断していたから、……か。
理由は、はっきりとはしない。
……もしかしたら、ただ、単純に音里への愛が深かっただけ、かもしれない。
会いたくて、愛しくてたまらない……もう、居ない人。
夢の中だけでもと求める人。
そんな人が現れたのだから、縋らずには、いられなかったんだ。
月香の一時の夢の代償は、オレの止まない痛みとなる。
……馬鹿なコトをしたもんだ。
ジクジクと痛む胸を押さえ、頭から被る湯は、沸き上がる涙を誤魔化すように顔を伝い、排水溝へと吸い込まれていった。
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