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The wing which died surely turns into love
ただ、似ているから < Side H
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月香の腕がオレに伸び、片手で易々と首を絞められる。
「ぅっぐっ……」
じりじりと絞められていくオレの首。
一瞬、爪を立てそうになり、思い止まった。
傷つけたく、……なかった。
凄みを効かせた月香の視線に、萎縮する。
「ぅ……くぅ…………」
答えたくとも、喉を絞められたままのオレは、言葉を紡げない。
閉じそうになる瞳を微かでも開き、月香を見詰める。
″音里に見えるように、呪縛をかけただけ…″
必死に、思いを伝える。
「かけただけ? 人の心を弄んで、楽しかったですか?」
柔らかく紡がれるのに、凍った感触がする。
冷えた思いに、真剣に謝罪の念を伝える。
″ごめん。ごめんなさい……そんなつもりじゃ…″
思ってみても、言い訳だ。
きゅっと閉じた瞳で、真っ暗な中で、謝罪の想いを繰り返す。
月香は、呆れるように息を吐き、言葉を繋ぐ。
「馬鹿にするのも大概にして下さいね」
ぱっと手を離した月香に、激しく噎せ返る。
「げっほ……げほっ…………」
真っ赤な顔に涙目で見上げた月香の瞳は、怪しく光る。
「一緒に滅びますか? 覚悟さえすれば、私は、貴方を殺せますよ」
自分が滅びる覚悟を決めれば、オレを沈めることなど、月香には容易い……。
でも、道連れにされるなら、それも悪くはないと思ってしまった。
そんなことを考えてしまう自分は相当、月香に惚れている。
「……簡単に捻り潰せるんです」
月香の、じとっとした瞳がオレを見やる。
……捻り潰せるけど、潰さないのは。
「大好きな人に、似てるから?」
オレは、むくれた顔で視線を背けた。
月香は、そっぽを向くオレの前髪を掻き上げる。
「そう。ただ、似てるから、……です」
ちらりと重なった視線に、月香の瞳が悲しさに歪み、背けられた。
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