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The wing which died surely turns into love
腐ってもエリート
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慌て振り返る私と陽静の瞳には、にたりと笑う秋雨の姿が映る。
「やっぱ、生きてんじゃん。居るんじゃん」
驚きに言葉を失う私に、秋雨は、見下すように細めた瞳を向けた。
「しっかし…、上手く隠したね」
くすくすと可笑しそうに笑った秋雨は、ゆっくりと足を進め、私と陽静の肩に触れる。
私たちの間から覗き込むように顔を出した秋雨。
「どうせ葬られたコトになってっし、オレが手を下したって、なんの罰もないよねぇ」
んふふっと嫌な笑いを浮かべた秋雨は、両手で私たちを左右へと撥ね退けた。
バランスを崩した身体に、私も陽静も地面へと倒れ込んだ。
真ん中に空いた隙間から数歩前へと歩み出た秋雨は、掌を上に向け、指先に力を溜める。
崩れた身体のままに、足を伸ばし、秋雨の足を払った。
「ぉ、わ……」
予期せぬ私の反撃に、秋雨がそのまま倒れ込む。
仰向けに倒れた秋雨の腰の上へと乗り上げた。
私を見上げる秋雨は、不敵な笑みを浮かべていた。
「あんたの力がどれほどでも、所詮、咎人。オレのコト、殺せないっしょ」
ふっと馬鹿にするように嘲笑う秋雨に、私は、そのこめかみを鷲掴む。
音里が葬られるくらいなら、私の命など要らない。
私の命で、音里を守れるのなら、安いものだ。
グッと上がる口角は、音里を守れたことへの誇りだった。
「止めろっ! 月香!!」
慌てて叫ぶ陽静の声は、私の耳には届かない。
音里を葬らせる訳には、いかない。
「貴方に、音里を葬らせは、しないっ」
私は、腐ってもエリートだ。
私の力があれば、こいつを葬ることなど容易い。
滅するコトは間に合わなくとも、精神から破壊してしまえばいい。
二度と目覚められないように……。
「マジかよ」
私の力のかかり具合に、秋雨の焦った声が放たれた。
諦めたように、息を吐いた秋雨は、言葉を繋いだ。
「でも、お前だけでも……」
にたりと片方の口角を上げて嗤う秋雨に、私は、こめかみを掴む手に呪力を込める。
「葬れ、る……」
嬉しそうに呟く秋雨の声が耳に、こびりつく。
その言葉に、間違いは……、ない。
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