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The wing which died surely turns into love
一向に訪れない痛み
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私は、秋雨の記憶を深く抉り取った。
……深く抉ることしか出来なかった。
陽静に抱きつかれ、秋雨のこめかみを掴む手を、剥がされてしまったから。
秋雨の精神を壊すまでは、叶わなかった。
それでも、私は、死んでしまう。
監視者に制止されながらも呪力を発動した。
それは、私を制裁するに値する事象だから。
秋雨の上から退かされる身体の背後で、蛇の威嚇音が響いた。
ふわりと離れる陽静の体温。
覚悟を決め、瞳を閉じた。
痛みは、きっと一瞬だ。
次に瞼を上げたとき、映る空が霞み消える。
私の身体も、朽ちて消える……。
……。
覚悟をしていたのに、その痛みは一向に襲ってこなかった。
「いっつぅ……」
代わりに聞こえてきた陽静の悲痛の声。
蛇が噛みついたのは私ではなく、陽静だった。
堪えきれないというように、陽静の背に、大きな翼が広がる。
陽静は、噛みついた蛇をそのまま握り潰した。
潰された蛇は、塵となり、空中に霧散した。
私は慌て立ち上がり、陽静の手を取る。
蛇の牙は、陽静の人差し指の付け根へと歯形を残す。
陽静は、ネクタイを外し、手首へと巻き付けた。
その動作が、毒が身体へと回るのを防ぐためだと気付き、引き継ぐように手首できつく縛り上げた。
血が滴る掌。
毒を吸い取れば、いいのではないかと、陽静の右手を唇へと寄せた。
近寄る私の唇を、陽静の左手が塞いだ。
疑問符の浮かぶ怪訝な瞳を向ければ、陽静は、呆れたような顔をする。
「何しようとしてんの? ……吸い上げようとでも思った?」
納得できないままの瞳で肯定するように瞬けば、陽静は、小さく溜め息を漏らした。
「ダメだよ。あれ、オレがかけた呪縛なんだよ? こんなの、月香の口に入ったら……少しでも取り込んだら、タダじゃ済まない」
陽静は、悔しそうに、腹立たしそうに、言葉を紡いだ。
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