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The wing which died surely turns into love
嫌なのは一緒 < Side X
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キッチンへと足を向け、結芽の為の麦茶を淹れる。
そんな俺の後についてきた結芽が口を開いた。
「弟、居るなんて聞いてねぇんだけど?」
結芽が内緒話をするように、声のトーンを落とし、俺に話す。
少し不機嫌気味だ。
「……家庭の事情ってやつ?」
「何で疑問形なんだよ? ……まぁ。いいけど」
結芽は、不満げに言葉を放ち、俺の淹れた麦茶に、その場で口をつけた。
「俺、佳梛んとこに泊めてもらうかな」
カリカリと頭をかきながら声を漏らす結芽。
俺は慌て、思わず、結芽の手首を掴んだ。
「俺も行くっ」
初恋の相手である佳梛の元へなど行かせたくない。
綺麗さっぱり、気持ちの欠片もないと知っていても、やはり不安になる。
「佳梛んとこ、キッズスペースあるからそこに寝かせてもらうだけだぞ」
手首を掴む俺の手を剥がし、結芽は、呆れたように言葉を紡いだ。
「ベッドでお前の弟寝てるし、幼馴染みもいるだろ? ついでに俺とお前までって床で雑魚寝するしかねぇじゃん? ぜってぇ身体痛くなるし……」
それでも、俺は、不満げに結芽を見やる。
「本当は俺も嫌なんだけど……」
ぼそっと声を放った結芽の瞳は、月香へと向く。
読めなくても感じられるのは、結芽の心の底でゆらゆらと揺れる嫉妬心。
月香との記憶がなくとも、心の底では嫉妬の火種が燻っていた。
結芽は、月香から瞳を逸らすと、気持ちを切り替えるように頭を振るう。
「病人追い出すわけにも、いかねぇだろ?」
するっと滑った結芽の視線は、陽静を見やり、俺に向く。
俺の頬に手を添え、人差し指で優しく撫でる。
理解を求めるように、お願いとでも言いたげな結芽の瞳に、俺は、折れるしかなかった。
飲みかけの麦茶の入ったコップを持ち、2人の元へと戻った結芽は、口を開く。
「積もる話もあるだろ? 週末なら、ここに居ていいよ。俺、ダチんとこ、行ってくるから」
ゆっくり休んでくれとでも言うように、結芽は、陽静に笑いかけた。
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