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The wing which died surely turns into love
オレたちは……?
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俺は、陽静の頭を荒く撫でた。
「幸せにするでも、守るでもいいから、お前は早く治せっ」
小突くように放った頭に、うっと詰まったような音を発した陽静は、すごすごと布団の中へと戻っていく。
布団の端から見えている陽静の黒い髪。
月香は、複雑な表情で微かに湿る陽静の髪を梳く。
ひょこっと布団から頭を出した陽静は、上体を起こし、俺へと瞳を向けた。
「帰ってみたい? オレなら、見つからないように連れてくことできると思うけど?」
戻れば、多少は延命もできるでしょ? と、陽静は、言葉を足した。
俺は、何を言っているのかと言わんばかりの冷めた瞳を向ける。
「だって放っておいたら後何年生きられんの? 戻れば、命、延びるんだよ?」
はぁっと面倒そうに息を吐いた俺は、声を放つ。
「俺は、結芽の傍に居たいの。寿命が延びたって、その世界に結芽は居ないんだよ。そんな世界で、生きたくないね」
ふんっとそっぽを向く俺に、陽静の苛立った声が響く。
「オレたちは?」
言葉に、話続ける陽静へと、冷たい瞳を向けた。
「オレと月香は、あんたの居ない世界で生きなきゃいけないんだよ?」
責めるように紡がれる言葉に、俺は、素っ気ない声を返す。
「……知らねぇよ。俺が好きなのは、結芽だから」
ふいっと逸らせる俺の瞳に、陽静は、むっと口を尖らせた。
「可愛くねぇ」
面白くなさそうに放たれる陽静の声。
「息子に可愛いとか思われたくないし」
俺は、見下すような瞳を陽静へと向けた。
「あーでも、あっち行って、秋雨が目ぇ覚ましたら間違いなく……」
陽静は、親指を立てた手を、首の前に横一線に走らせた。
おちゃらけるように、舌を出して見せたが、それは俺が葬られるコトを示唆している。
「何? 俺のコト、殺したいの?」
嘲るように紡ぐ俺の言葉に、陽静は、本気とも冗談とも取れるような、微妙な笑みを浮かべた。
生きていて欲しいのか、死んでほしいのか、……矛盾している。
「まぁね。あんたがいなければ、オレ、幸せになれてたと思うし……」
悔しそうに紡がれる陽静の声は、何だか胸が痛くなる。
心など読めなくてもわかる。
陽静は、月香を愛してる……。
「でも、あんた居なかったらオレも生まれてねぇのか…」
うーんと唸るような声をあげた陽静は、眉を寄せ、困り顔を作った。
「それも困る……」
ははっとチャラけるように陽静は、笑った。
陽静の相手をするのも疲れてくる。
「俺、ちょっと出てくる」
声を放った俺に、問い掛けるような瞳を向ける月香。
俺は、くっと片方の口角を持ち上げた。
「素直になんなよ。愛されるのも悪くないよ」
ひらひらと手を振り、俺は、家を出た。
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