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The wing which died surely turns into love
俺が決めたコト < Side X
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翌朝、多少体調が回復したらしい陽静が口を開いた。
「やっぱり帰ろう?」
陽静の言葉に、俺は、眉根を寄せた。
「あいつと一緒に居たって、寿命縮むだけだろ?」
月香は、俺たちの会話に耳を傾けながらも、口出しはしない。
曲げるつもりの無い意思。
俺は、結芽の傍を離れるつもりは無いのに。
陽静は、それでも俺を連れ帰りたがる。
ガチャリとなった鍵の開錠音に、瞳を向けた。
夕方過ぎまで戻って来ないだろうと思っていた結芽の姿が視界に入った。
スタスタと歩み寄る俺に、結芽は、靴を脱ぎながら、ちらりと見やり口を開いた。
「悪ぃ。帰ってきちゃった……」
結芽の顎を掬い、陽静や月香へと見せつけるように唇を重ねる。
状況が把握できない結芽の瞳が、驚きに開いた。
次の瞬間には、こめかみに、ぱしりと平手を食らう俺。
「アホかっ」
結芽は、袖口でこれでもかと言うほどに唇を拭った。
「……バイ菌みたいな扱いしないでよぉ」
むぅっと拗ねた顔をする俺に、結芽は、信じられないと言わんばかりの瞳を向ける。
「弟の前で、何してんだよっ」
結芽は、口許を掌で覆い、表情を隠そうとした。
強がって見せても照れているのが丸わかりなほど、結芽の耳は赤く染まる。
「俺が一番大事なのは結芽なんだって……言葉で言っても理解しないから」
じとっと嫌味な視線を、陽静へと向けた。
「結芽を置いて一緒に帰ろうとか言い出すから、ムカついた」
子供のように唇を尖らせる俺に、結芽の呆れた溜め息が続く。
「俺は、結芽が傍に居れば、それでいいの」
結芽を家の中へと引き摺るように上げ、後ろから腰に腕を絡め、抱き締める。
「あとは、要らない」
むっとした声を放った俺は、陽静と月香に対し、シッシッと手を振るった。
結芽は、呆れるように、再び息を零した。
好かれている自信はあっても、心変わりしないなんて言い切れない。
俺は、死ぬまで結芽を愛し続ける自信はあるけど、結芽の心が絶対に変わらないなんて保証は、どこにもない。
それでも、傍に居ることを望んだのは俺だから。
長寿と引き換えに得た居場所。
たとえ、結芽の気持ちが変わったとしても、俺は、一途に思い続ける。
この命が尽きてでも。
じわじわと寂しさが胸の中に広がっていく。
自分が朽ち果てたとして。
結芽が亡くなってしまったとして。
そんなことを考えれば考えるほどに、胸が苦しくなっていく。
抱き締めている結芽の肩口に顔を埋めた。
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