アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
この辺なら…
人魚はぐっと力を込め、上に上がる。2人が海面に顔を出すとラウトが話しかけてきた
ラ「すまない、助かった」
「僕が助けたんだから死ぬのは許さないからね」
ラ「ああ、勿論だ」
「此処ならもう足つくよね、それじゃあ」
ラ「あっ、おい、待てよ!」
ラウトは海に潜ろうとする人魚の腕を掴んだ
「痛っ!」
ラ「わ、悪い…」
ラウトはパッと手を離すと気まずそうに頬をかいた
この人…今まであった人間とは少し違う?殺そうとも捕まえようともしない…
逆に僕の気持ちを優先してくれる
ドクンッ…
あ、れ…?
「じゃあ僕もう行くね」
ラ「なあ!お前の名前教えてくれよ!」
「………ない」
ラ「え?」
「僕に名前はないよ。…じゃあね」
……やっぱり、名前考えておけばよかったかな…?
でも僕って…いつから名前なかったんだっけ?
いや、初めからなかったんだっけ?…あれ?
ラ「待ってくれ!あと1つだけ」
「…何?」
ラ「また会えるか?」
えっ?
人魚は驚き、ラウトを見つめた
僕に……?
ラ「やっぱり無理か…?」
別に無理じゃない!無理じゃないけど…でも、どう伝えたらいいの?
直接言うなんてできないし、何かいい方法ないかな?
その時、風に吹かれたアクセサリーが音を立てて揺れた
そうだっ!
「……これあげる」
人魚はそう言って自分が身につけていた耳飾りを片方外した
ラ「え?」
「お守り。僕が作ったやつだからそれ持ってたら
会えるんじゃない?」
ラ「っ…ありがとう」
「別に…。付け方わかる?」
ラウトは耳飾りを見てすぐに人魚に視線を戻した
ラ「すまない、分からない…」
あはは…と笑うラウトに人魚は、はぁ…とため息をついた
「…貸して、付けてあげる」
ラ「すまないな」
人魚は耳飾りを受け取るとラウトの右耳にそれを付け始めた。沈黙が気まずくなった人魚はラウトに話しかけた
「…サメの牙は僕にとってお守りなの」
ラ「お守り?」
「海のあらゆる危険から身を守ってくれる」
ラ「そうなのか?」
「貴方海賊でしょ?海賊って争ってすぐに
死んじゃいそうなイメージだしさ
それにさっき、許さないって言ったでしょ?」
ラ「っ!…ああ、そうだったな……」
ラウトはふわりと微笑む。人魚はその表情にドキリとするが動揺を見せないように平静を装った
よし、付けれた
「付けたよ。それじゃあ…」
ラ「ああ、またな」
人魚はラウトに背を向け潜ろうとする。しかし、途中でピタリと動きを止めた
ラ「どうかしたのか?」
人魚はラウトに背を向けたまま言った
「……その青い石さ」
ラ「?」
「人間の間で人魚石って言うらしいの
………失くしたらもう会わないからね」
人魚の言葉にフッと笑う声が聞こえた
ラ「失くしもしなければ盗られもしねぇよ
これは俺の宝だ」
「っ…あっそ!またねラウト!」
人魚は今度こそ海に潜る
「なんで俺の名前っ!」
今度は人魚が泳ぎながらフッと笑う
「この前聞いたんだよ、ばーか」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 67