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第4話
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「お兄さん、どうしたの」
突然、頭上から高く澄んだ声が降り落ちる。
伏せていた顔を上げて、目を見開いた。
どうして。
「久しぶり」
視界いっぱいに映るのは、そういって微笑む女の子。
俺のよく知った人だった。
「ひさし、ぶり」
驚きに声が途切れてつまる。だって信じられない。どうしてお前がこんなところにいるんだ。
だって、お前は。
「おいで」
腕を強引に引かれて、立ち上がる。
俺より随分小さな体の癖に力だけは昔から強い。
「裕之、あんた随分背が高くなったね」
「…優子は何にも変わってないな」
彼女はあの時から、何一つ変わってなかった。小さな体も、一際白い肌も、括りもせずに風に揺らしたままの黒くて長い髪も、偉そうな口調も、そして身を包むセーラー服も。
「背、伸びると思ってたんだけどなあ。まあしょうがないか」
振り返って歯を見せて笑う。俺はそれに何も返せなかった。
優子は俺の腕を引いてどんどん人混みの中を進む。
どこへ連れていくのだろうかと気にする余裕もなく、ただ目の前の彼女の背中をジッと見ていた。
だって未だに信じられない。
夢でも見ているのだろうか。
それでも俺の腕を掴む手はリアルで、街に吹く風のように冷たくて気持ち良かった。
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