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とーわside
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「燈和!」
藍川棗。おれの反対側で生活してる奴。
そしておれの隣の席の小日向憂を一番よく見てる奴。
だから藍川棗の印象といえば小日向と噂になってる学級委員の男子ってくらい。
明るくて、真っ直ぐな藍川棗はある意味おれの標的だった。俺のできないことを容易くやってみせる。おれは絶対に藍川棗を超えることはできないと思ったし、憧れて、そして羨んだ。
本当はああいう人になりたかった。
でも、できなくて、悔しくてでももう頑張るなんていう感情も起きなくて。
決まった男友達としか絡むこともしなかったし、周りのクラスメイトたちもおれの相手をするのは面倒臭かっただろうから最初は話しかけてくれたとしてもすぐに離れていった。
棗以外は。
とーわ、とーわ煩い。
初めて会った時なんか関わり合いになると大変だからと思ってバスずらそうとしたくらいなのに。
大事な、人。
憧れ、羨望、妬み、嫉妬、気づいたらそんなんじゃなくなってた。
棗が好きなんだとわかった。
驚きとかそんなようなのもあまりなかった。
だって好きになった理由がわかるから。おれとは全く違う人、おれが本当は欲しかったものを持ってる人。
自分の好きなような人を好きになったんだなぁと思った。
ただ、今更気づいたとか、ずっと前から好きなんだろう小日向さんに申し訳ないなあとだけ、ぼんやりと思った。
「燈和!」
「藍川くん…、おはよ。」
1週間に一度。
そのくらいの頻度で朝棗と会う。
もう、桜が散ってる。
窓越しに揺れるそれを棗はじいっと眺めているようだった。
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