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君の幸せ⇔俺の幸せ
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「へぇ…そりゃ災難だな…」
「だろ?それ知ったのが、まぁ、最近でさ…なんつーの、ショック」
いつになく頭が悪そうな語彙力の早川を見て、重傷を悟る。
「可哀想に…俺が慰めてやろうか?よちよち」
「ばっか、逆効果だっつの」
赤ちゃん言葉で頭をガシガシと撫でる鶴見の腕を「いいってば」と制する。
「まず恋愛対象かすら微妙だし…」
望み薄だよ、と自嘲気味に笑う。
「お前の分の恋は俺が叶えるからな…任せろ」
せめてものフォローのつもりで、そう言い親指を立てる。
その時早川は、一瞬泣きそうな顔になった。
すぐにまたニコニコし「おう、頼むわ」といつもの調子に戻った。
「俺も応援する。鶴見と綾瀬、お似合いだし、俺に出来ることがあれば、なんなりと言ってくれ」
風紀委員の力があっても無意味かもしれねーけど、と笑う早川の顔を見て、少しほっとしつつさっき一瞬見えた顔の真意を考える。
俺は何か、まずいことを言ったのでは?
そういう考えが頭をよぎったが、思い当たるふしもないまま、結局わからずに終わった。
❀❀❀
帰り道。
とぼとぼと一人で道を歩きながら、早川は考えた。
「…不自然だったよな、やっぱ…」
昼の自分の言動を思い出し、反省し後悔する。
きっと、俺の気持ちは届かない。
「好きな人がいるなんて、聞いてねぇよ……知りたくなかったなぁ…」
淡い光を放つ街頭を眺め、唇を噛む。
ラブレターを渡せと頼まれた時、ドキリとした。
相手は1年の頃からの憧れである、鶴見康祐。
大して仲良くもないが、俺なら茶化すことも渡さないということもないと彼女は確信していたのか、俺の返事を聞く前に一方的に手紙を押し付けてきた。
正直、気が気ではなかった。
OKしたら付き合うのだろうか?
彼女は真面目で清楚な雰囲気の女の子だ。
不良っぽい鶴見とは釣り合わないんじゃないか。
そんなことを考える自分が嫌だった。
どうせ自分には、彼に告白する権利すら無いというのに。
「…やめやめ、なんか虚しくなってきた」
フルフルと首を左右に振って、頭を切り替える。
「応援するって言ったじゃねーか、うん、大丈夫…きっと、二人は幸せになれる」
光り始めた月に視線を移す。
明るいとも暗いとも言えないどっちつかずの色。
「…中途半端な月…俺みたいだ」
明日も話せる喜びと、彼の恋を応援する苦しさは、どっちつかずの俺を苦しめるには充分過ぎたんだ。
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