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花と蛇 12
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目を覚ましたのは、いつもの俺の部屋。
青色のカーテンが白い壁に反射し、部屋全体が静かな海のようになる部屋。
窓から射し込む光で朝だと分かるが、いつの朝だか分からない。
お兄ちゃんの記憶はある。でも、家に帰ってきた記憶はない。
「あら、こうちゃん。起きてきたの? 大丈夫?」
下に降りてダイニング向かうと、みんなが揃っていた。
いつも優しい笑顔のお母さんが、ちょっと心配そうな顔をしている。
「こうちゃん、お熱は? 下がった?」
朝食をとっていたお兄ちゃんの馨が、席を外しておでこをコツンとくっつけて熱を測る。
「熱はもうなさそうだけど、まだ、ボンヤリしてる。こうちゃん、大丈夫?」
「……おるちゃん」
「二日間も眠ってたんだ、ボンヤリもするさ。今日一日しっかりと休んで、明日からまた学校に行けばいい。公平、今日は大人しくしてるんだぞ」
お父さんはそう言うと、大きな手で俺の頭をポンポンした。いつものように、きっちりと身支度を整えてリビングを後にする。そして、いつものように玄関先から“いってきます”の声。
俺、二日間も眠ってたの? 全く記憶にない。
「こうちゃん、ご飯少しだけでも食べようか? 薬飲まないといけないから」
お母さんが屈んで俺の顔を覗き込む。いつもの優しい顔だ。
俺は頷き、自分の椅子に座る。テーブルの上の料理を見て、お腹が空いているような気になった。
二日間も眠っていれば、当たり前か…。
お母さんが料理を運んでくれるのを待ちわびていると、隣に座っていた弟が口いっぱいに頬張りながら訊いてきた。
「こうちゃん、お熱もういいの?」
弟はまだ小学一年生なのに、他人を憂う心が育っているのか、心許ない表情を見せた。
「うん。もう大丈夫だよ」
「じゃあさ、学校から帰ってきたら遊ぼう?」
「バカだなぁ、翼。今日は大人しくしてるんだよ。お父さんだって言ってただろ?」
「だって、こうちゃん大丈夫って言ったもん」
「それは、今はってこと……」
「ハイ、ハイ。もう、病人の前で喧嘩しないの。こうちゃんは今日一日ゆっくり休むから、遊ぶのはまた今度ね」
お母さんに窘められ、勝ち誇る馨とブスくれる翼を見て、ふっと力が抜け眉が下がった。
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