アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蜜と蟷螂 8
-
ぼんやりと聞こえてくる黒崎君の声に従っていたら、十分ほどで発作は治まった。
苦しさがどんどんと薄れていき、気がつくと俺は震える手で黒崎君の手を握っていた。
回復しゆく中、黒崎君が背中を擦る手は、どれほど安心できたか。
落ち着くと、本当に何でもなかったようにいつもと同じ。
「落ち着いた?」
黒崎君の心配そうな声。迷惑かけたのに微塵も嫌そうな感じがしない。
「…うん…、ごめん…黒崎君の帽子、叩いちゃった…」
「…あれは…、…俺が悪かったから。急に変なこと訊いて……ごめん…」
俺は首を横に振った。黒崎君が俺の手を握り返す。
震える手を静めてくれているのか、背中の手と相成って、抱き締められているような大きな安心に包まれる。俺は漸く目を開けることができ、黒崎君の顔を見た。
声だけじゃない。心配そうな顔。
この症状を見れば、何もなかったとは思わないだろう。
これをいい方向に捉えるなら、隠す手間も省けたし、話す手間も省けた。
…いや、話すことはまだある。
レイプが何か知ってて、その卑劣さも分かってるなら話が早い。
「…黒崎君には、俺がどういう風に見える?」
大人にイタズラされたことがあるだろと訊くぐらいだから、そういう風に見えるのだろう。
「どういう風? 天使かな?」
「ブフッ!」
──あぁっ!? 何ですと!?
「ブフッて、そんな吹き出し方、漫画以外で初めて見た」
「……俺も初めてした。…て……天使って…」
平然と言ってのける黒崎君。さっきまで発作でひぃひぃ言ってたのに、俺……何か、ぶっ飛んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 125