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蜜と蟷螂 29
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「宇佐美君は面白いこと言うんですね。フフ…花の蜜かぁ……確かに指だけでも、蕩けるくらい美味しかったなぁ」
心臓がドンッと重く打った。先生が俺のことを言ってる。
話題が変わってホッとしていたけど、もしかして、最初からずっと俺のことを話していた?
「……!?」
ナツも何か感付いたみたいだ。
ナツの手の中に隠していた俺の指を、ギュッと握り返してくる。
俺がナツに顔を向けると、ナツはチラッとこちらに視線を送り、人差し指を口元に当てた。
細やかな俺のシェルター。
ナツは言葉通り、俺に付き合ってくれている。本人は助けてるつもりなんてないんだろうけど、俺はこの小さなシェルターを拠り所にしていた。ナツという存在も、あの約束も。
「先生なのに、生徒を餌にするのはどうなんでしょう?」
「でも、宇佐美君にそれを止める術はない。カマキリが知った味は想像以上でね。蜜だけじゃなく花まで食べ尽くしたくなりました」
先生とお兄ちゃんの会話はまだ続いている。耳を疑うような言葉に、ゾクッと寒気が走った。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い!
大の大人が寄って集って、俺を喰い物にしようとしている。
その悍ましい光景がまざまざと脳裏に浮かんで、思わず目をギュッと瞑った。
「センセー、ここ」
ナツが足を止めて、先生を呼ぶ。気がつくとそこは、俺の家の前。
先生はニコニコしながら俺達に寄ってきた。録でもないこと考えてたくせに、勝ち誇った顔だ。
お兄ちゃんは……能面のように無表情で、先生の後ろ姿を睨んでいる。血の通わないあの目付き。
「お兄ちゃん、じゃあね」
俺が手を振ると、お兄ちゃんはハッと平常を取り戻し、手を振った。
「さ、謝りに行こう。早くしないと、遊ぶ時間がなくなるからね」
先生が遮り、俺とナツを家へ家へと追いやる。俺は仕方なく先生に従った。
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