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蜜月 27
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殴られたり、蹴られたりだけが暴力じゃないと知った。
勿論、幼い身体にセックスは暴力だけれど、想い人の自我を押さえ付け、己れの理想に捩じ込むのも立派な暴力だと思う。
「…旦那様は、頭洗わないの?」
頭の泡は綺麗に流され、絞り切れなかった水分が滴や髪を伝って落ちてくる。
目に入らないよう手で拭き取りながら、お兄ちゃんを振り返った。
「ん、僕はいいよ」
「何で? 俺、ここに凭れて見てるから、洗えばいいじゃん。頭もきっと煤だらけだよ?」
「……大丈夫…」
「じゃあ、俺が洗う。きちんと洗うって言ったから。シャワー貸して?」
お兄ちゃんの手の中にあったシャワーヘッドを奪おうと手を伸ばしたら、軽く阻止され、大きな溜め息をつかれた。
「…自分でやるよ。こうちゃんはこんなことしなくていいから……ここにいて。僕の側にいて…」
怒ってる? イラついてるの?
分からない。けど、冷たい瞳を向けられた。自分の思い通りにならないのが嫌なのか…。
俺はシャワーヘッドを奪うのを諦め、バスタブに凭れ掛かった。
そして、側にいてほしいと言ったお兄ちゃんの要望に応えるべく、足の指を握る。
お兄ちゃんは安心したのか、髪を洗いだした。
目を瞑り、俺の姿が見えなくなるのが、そんなにも嫌なのだろうか?
大きな親指、硬い爪。血管の浮き出た足の甲。
どれも俺に無いもの。足の指を握っているだけでは手持ち無沙汰だ。
大きな爪を押してみた。
「……フフ、指圧してくれるの? もっと強くても大丈夫だよ?」
気持ちいいみたいだ。
甲の血管の膨らみも気になったので押してみた。プニプニしている。
暫く押していても何も言わなかったので、血管は何も感じないのだろう。
俺はお兄ちゃんの足にいたずらしながら、浴室にある窓から空を見上げた。
何もない、だだっ広い空。青い空と白い雲が見えるだけで、送電線の一つもない。
近くに民家も施設もないのは分かった。やっぱりここは陸の孤島なのだ。
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