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家の中に入ると、弟は既にお風呂に入り終わった後だった。
俺が帰ってきたことに気がつくと、濡れた髪の毛のまま俺に近寄って『おかえりなさい』と笑った。
膝の怪我以来、弟が俺に笑顔を向ける度、心臓がドキドキしていた。
それが何か分からず、俺はイライラしているんだと思い込んでいた。
その時は短く返事をして、俺は弟から逃げるように風呂に入った。
風呂からあがると、弟はまだ髪の毛が濡れたままだった。
濡れた髪の毛のまま、テレビを観ている弟に俺は声をかける。
「おい、髪の毛濡れてる。風邪ひくだろ」
「面倒くさかったんだもん」
「はあ、…乾かしてやるからコッチにこい」
ドライヤーをリビングに持ってくると、俺はドライヤーのコンセントをさし、床に座った。
俺の言葉を聞いて、馬鹿みたいに喜んでコッチにきた弟を見て、思わず口元が緩んだ。
「兄ちゃん、笑った」
「……笑ってねぇよ」
「んふふ」
弟は嬉しそうに笑うと、ドライヤーを持っている俺の前に座った。
大きな音を立ててドライヤーが風を生み出す。
俺は弟の濡れた髪の毛を、優しく指を通して髪の毛を乾かした。
後ろを向いているはずなのに、弟が喜んでいるのが痛いほどに伝わってくる。
それを感じて、胸がくすぐったくなった。
誰といてもこんな気持ちになることは無い。
俺はこの気持ちが何なのか、ゆっくりと気づき始める。
だけど、それは完全に気づいたらいけないものだと思い、俺は頭をブンブン振った。
それから俺は無心で、弟の髪の毛を乾かした。
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