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episode.00 3年前の話
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〜琉side〜
2031年、9月のある日。
「あ、琉さん、今日、人を家に呼んでるんですけど。」
青木恋(あおきれん)は家事の手を止め、話しかけた。
その相手、赤津琉(あかつりゅう)は台本から顔を上げる。
「え、突然だな。俺は構わないけどさ…どんな人?」
琉は若手人気俳優で、恋の婚約者である。
気持ちを伝えるまでに時間は随分とかかったが、今では幸せだ。
「AV男優をしてた頃にお世話になった先輩です。それと、多分、もう一人来ると思うので…キッチンのコンロは隠します。」
「どういうこと?」
恋の発言に、琉は不思議に思った。
コンロを隠すとはどういうことだろうか。
「とにかく、コンロには布をかけて、あとは…あとは俺が用意しますから。あ、琉さん、絶対大声出さないでくださいね。」
「わ、わかった。」
どうやら来客者は琉の思う"普通"ではないらしい。
コンロに布をかけ、テーブルにはチョコレート、飴、クッキーなどのお菓子が並べられた。
一通り準備を終えた頃、インターフォンがなる。
「はい、今出ます!」
恋が玄関に向かい、二人の客と戻ってきた。
「あ、初めまして。恋の恋人の赤津琉です。」
立ち上がって名前を名乗り、頭を軽く下げる。
「初めまして。へぇ、これが噂の恋人?」
背の高い、顔が整った男がニヤニヤと恋を見る。
「う、うるさいです。」
「この人にあのネグリジェ使ったの?」
「それは俺の友人が使いました。」
「なんだ、じゃあ今度、恋に別のプレゼントしてあげるよ。」
「いりません!」
「けんか、だめ、なの。」
男と恋が話しているのを遮り、かなり小柄な少年がそう言う。
話し方はだいぶ幼く、たどたどしい。
「これは喧嘩じゃないの。わかった?」
男がため息をつきながら少年にそう言う。
「れん、けんかじゃない?」
「うん、喧嘩じゃない。ごめんね。あ、チョコレート用意してあるよ。」
「ちょこれーと、あまいの。」
「よかったな。ありがとうは?」
「あり、がとう。」
琉を置いて話が進む。
背の高い男が、おそらく恋の先輩だ。
だが、この少年は?
「琉さん、すみません。こちらが先輩で、こっちは先輩の恋人です。」
未だ名前もわからない彼らに、琉はもう一度、軽く頭を下げ…ようと思ったのだが。
「恋人?!この小さい子が?!」
思わず声を上げてしまい、少年はビクッ、と震えた。
「あ、ごめん。」
「ごめんね。大丈夫、琉さんは痛いことしないから。」
「りゅう、いたいこと、しない。わかったの。」
「琉さん、言ったじゃないですか。大声あげないでくださいって。」
「ごめん…だって…その…この子いくつだよ?犯罪…だろ?」
未成年の恋と契約恋愛などということをしていた自分が言えた話ではないが、さすがにこれはまずい気がした。
「…あははは!犯罪!俺犯罪者!あははは!」
男が突然笑い出し、少年はきょとん、と男を見上げ、恋もクスクスと笑う。
「琉さん、お言葉ですけど、彼は俺と同い年ですよ。」
つまり、それは
「え、20歳?」
到底20歳には見えない少年、いや、青年を見る。
「まだ誕生日来てないので19ですけどね。」
どちらにしても信じられない。
体は小さく細く、話し方も幼い。雰囲気だけでいうなら中学生だと言われても納得するかもしれない。
「ぼく、19さい、だよ。」
「あ、あぁ…」
「とにかく座ってください。」
戸惑う琉を放って、恋がそう言う。
「おいで。」
男に呼ばれるとぽてぽてと歩く青年。
よほど男に懐いているらしい。
だが何がどうなってこうなっているのか。
「だめだ、ぜんっぜんわからん。」
「説明すると長くなりますけど、聞きます?」
呟いた琉に、男がそう言う。
「話すんですか?」
「今日は恋の彼氏と話したかったしね。」
なんのことかよくわからない。
なんの話を、するというのか。
「…あれは冬でしたよね?」
「今からだと4年前の冬だな。恋が16歳の時じゃないかな。」
男は青年の世話を焼いてやりながら話をする。
恋が16歳の冬、というと、2027年の話だ。
それがどうしたのだろう。
「あの…」
「あぁ、俺とこいつが会ったのが2027年の冬だったんですよ。」
それから始まった話は、この男と、青年が、出会ってから今まで、どう過ごしてきたのかというものだった。
それは、琉と恋が出会う3年前から始まる。
「あれは、確かー。」
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