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恋に気づくその日。
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それから、部屋に帰って...自室に篭る。先輩が大丈夫かと声をかけてくれるけれど、それをも耳に入れたくない。まだ、口の気持ち悪さが纒わり付く。
先輩が部屋に入った音を聞いて、外に出てトイレで吐こうとトイレにはいる。
「ごほっ、う"ぇ"ぇ...う"ッ"...」
留まることをしらない吐き気は徐々に気持ち悪さを悪化させた。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い...。
そんな感情が心を占める。
突っ込んでったのは俺。悪いのは俺。自分が悪い。
月宮先輩が大丈夫ならいい。そう言い聞かせるけど、体はいうことを聞かない。
落ち着きを取り戻してからトイレを後にする。
キッチンで水をすこしばかり口にする。
水を飲んだ、それだけなのに、嘔吐してしまった。
お茶を飲んでみる。それでもまた、嘔吐の繰り返し。
食べるもの、飲むもの、全てがアレにしか見えない。味が、全部...分からない。
何も感じない。
味がしない。
「...ん?おい、陽?」
先輩の手が頭に触れる。先輩は、ポンポンと撫でたつもりだったんだろう。
さっきの光景がフラッシュバックする。
頭を抑えられる...。
ー陽ちゃん...。
ー可愛いよぉ...。
気付けば、手を振り払っていた。
目の前には先輩の傷ついた顔。
「うわあああああ、あ...あ...。」
「落ち着けって!!!」
先輩の顔が近い。唇に柔らかい何かが当たる。
「ちゅ...」
思考回路が停止した音が聞こえたような気がする。
そんなのは一瞬で、先輩でさえあの男達にみえる。
怖い、気持ち悪い、たすけて...。
「きもち...わ...い...き...ち...わ...る...い...離せっ!!!」
どこに行けばいいかなんて分かんない。けど、無我夢中で走り続けた。
そして、辿りついたのは、談話室。そこしか分かんないから。
隅で、体育座りをする。、
そして、堰を切ったように涙が溢れてきた。
先輩を拒絶した自分の"最低"さ
これで良かったと思う"安堵"さ
味覚が戻らないんじゃないかという"恐怖"
先輩に嫌われたんじゃないかという"不安"
様々な感情が俺の中で入り乱れる。
思考を蝕む。
「君が...陽くん?」
「だ、誰!い、や...たすけ...。」
この人以外に誰もいないのは知ってるけど、
手を、宙に彷徨わせる。誰かに、手を掴んで欲しくて。引っ張り出してほしくて。
「陽ッ!!」
「せ、ぱい...。」
今、会いたくて、会いたくなかった人。
「こっち見ろ! 」
「嫌です!い、や...!離して...ください!...こわ、い...たすけ、てぇ...」
片手を、先輩とは違う方へ伸ばす。それも、先輩に受け止められる。逃げ場を失った手を離そうともがく。
すると、温もりが来て...ふわりと、石鹸の香りがした。そういえば、先輩...あの時、髪濡れてて...
思い出しては、顔を紅く染める。
「俺だ。俺は、あいつらじゃねえ!こっち見ろ!俺は、誰だ!?」
「先輩は...先輩...。鳴宮せんぱ...ぃ...。」
やっと認識できた。先輩を認識できた。先輩がいる。それだけで、安心感が募る。
「んー、優哉...もう戻っても大丈夫...?うちの子が心配しちゃうからぁ。あ、でも、うちの子、今来るってぇ。あ、僕...及川朔っていうんだぁ。さっき、優哉から、連絡来たから、皆で探してるの。」
あ、どっかできいたことが...。
ーよかったぁ、相原くんだ。同級生の。
ー光は相原悠悟...。
ー凛は、阿久津紺先輩...
ーあぁ、毒舌のか。
ー千尋は、暁凉雅先輩...
ー優希は、及川朔先輩...
ん?及川先輩のいう、うちのこ...とは...優希のこと!?!?
「も、ももも、もしかして、優希??」
「うん!陽くんのことは知ってるよ〜!優希が教えてくれるから!」
しばらく、話してると...
「お、おい!陽は、見つかったんか!?」
「よ、陽ちゃん...??」
「陽...。」
「よー?」
「よ、陽くん?」
「陽ってのは?」
「よ、陽くん大丈夫!?」
「陽だっけぇ?」
皆+先輩方が集まってきて。
光が、俺に抱きついた。
光なんか、目を赤くして、泣きながら抱きついてくるから...俺の服が涙でぐしょぐしょに。
「ご、めん...なさ...」
パシンッ!!と、乾いた音が響き渡った。
先輩も、皆の顔も引き攣る。
「な、何してんねん!!お前はぁ!自分犠牲にしてまで人守ったら、元も子もないやんけ!」
凛が涙をこらえて、唇を噛みながら...俺の襟を掴んで、揺さぶる。
迷惑をかけてしまった。
罪悪感で顔をあげられない。
「顔あげぃ!!」
頬を掴まれて、顔を無理やりあげさせられる。
「め、わく...かけた...。ごめん。」
「な、なに、いっとんの!?!?ふざけとるん!?それ、助けに来た俺らが馬鹿みたいやん!」
堰を切ったように凛の目から涙が溢れてくる。
あぁ、言葉の選択...間違ってしまったのか。そんな気分。
「ちょ、あの、え...?」
横目に月宮先輩が動揺してるのが見える。
怖い思いをしたのは俺。なんで、怒られてんだろ。なんなんだよ...。気持ち悪い思いをしてまで怒られる理由は何だろう。
「な、で...俺...怒られてるわけ...。なに、俺は、何をすればいい、わけ。気持ち悪い思いをしたのは俺。傷ついたのは俺。...これでいいんだってば。探してとも言ってない。見つけてなんていってない!」
凛を振り払って、また逃げる。
どこかで聞こえる。
ー 逃ーげた!
ー また逃げた!
ー 陽は、弱い。
ー 陽って名前あってねえよな!陰だろ!あっはは!
「いやだ、いやだ。」
逃げて逃げて、また一人ぼっち。
学生寮から出て、噴水前のベンチに座る。
「きょ、ぜつ...か。」
先程、先輩の手を振り払った自分の手をまじまじと見つめる。
先輩...。ごめんなさい。
「せんぱ、い...ごめ、な...さい...。」
あふれる涙は止まらない。
「あのぉ、すみません。」
「へ?は、はい!」
見上げると、可愛らしい女の人がいた。漫画の世界から出てきたような。
「ここにぃ、鳴宮優哉って人います?」
「あ、鳴宮先輩なら...多分談話室に。地図なら入ってすぐに貼ってあります!」
「あ、そうなんだ。ありがと!」
「ん?だれだろ...。」
その人の姿が見えなくなると、また溢れ出す涙。
はぁ、凛...俺のこと嫌いになったかな...。
ーーーーーーー
凛side
未だ、受け止められない現実。
俺、陽のこと、傷つけたんかな。
「大丈夫じゃねぇの。そんな弱ぇやつなの?陽っての。」
ぽんぽん、と頭を撫でてくる阿久津先輩。
「まさか。なわけないですよ。」
一応、先輩だから、関西弁...出さんようにしてる。
「だろ。んじゃ、大丈夫だろ。」
「優哉ぁ?」
もしかして、帰ってきたんじゃ!そんな期待は裏切られる。
そうだ、陽は...
ー先輩!
だから...。
そこには、清楚系の女の子がたっていた。モテるであろうその容姿に、計算高い表情。
「よ、う...じゃねぇよな。...舞か。」
「舞かってなによぉ。...今日行ける?」
「ごめん。むり。」
「え、なんでぇ!?」
「関わり、終わりにしよう。」
すると、鳴宮先輩って人は、携帯をいじり出して、女に見せる。そして、こう言い放った。
「俺に必要なのは、こいつらと、陽だけだ。」
「な、なんで...アドレス消したの...間違ったの?なら、これ...アドレ...。」
「いらねぇ。出てってくんねぇ?」
あの、来るもの拒まず去るもの追わずのあの先輩が。
女子のアドレスを消した、だと。
周りを見ても皆、ポカーンとしている。
「な、なんなのよ...あんた以外にもいい男なんているわよ!ふんっ!」
ドンッ...
「邪魔!」
「......よ、う?」
ーーーーーー
あの女の人が中に入ってから、数分が経った。
心がこう、モヤモヤってする。
体が行動を起こした。
少し駆け足で、先輩の元へ急ぐ。すると、目の前にさっきの女の人がいて、立ち止まる。
俺がいってもいいのか。
ー俺に必要なのは、こいつらと陽だけだ!!
「せ、ぱ...。」
涙を抑えるのに必死だった。
声を押し殺すのに必死で...。前を見れていなかった時...
ドンッ...
「邪魔!」
女の人がキッと睨んで寮から出ていった。
ぶつかられた反動で俺は、よろけて後ろに転んだ。
幸い目立つ怪我はしてなさそうだけど...
立とうとすると、足に電流が走ったような感じがして、またヘタンと、座り込んでしまった。
「......よ、う?」
「先輩...?」
先輩は俺を見るとギュッと抱きしめてきた。
先輩の顔が乗った俺の肩は、何かで湿っていた。
「先輩...泣いてます?」
「泣いてねえッ...。」
「見せてくださいよ。」
「泣いてねぇから!」
チラッと、覗くと...先輩の頬には一筋の涙が伝っていた。
ても、先輩の顔は何処かほっ、としたような顔で...。
「えへへ、先輩...。」
「なに、笑ってんだよッて...」
先輩の頬がちょっとだけ、紅く染まった気がした。
すぐ逸らされたから分かんなかったけど。
「あー、陽?笑うのは反則やんな。」
「へ?」
「ん、陽。部屋戻るぞ。」
「戻りたいんですけど、今ので足くじいちゃったらしいんです。」
「はぁ、しょうがねぇな。」
と、先輩は横抱きにしてきた。
あろう事か、ちゅ...と額にキスをした。
「おまじないなんだろ?月宮からきいた。」
歩きながら先輩は何度も、俺の額にキスをした。
先輩は、俺のことを優しい目で見て...何度も、俺を撫でた。
部屋につくと、リビングのソファに座らせて
「ちょっとまってろ」
と言った。
ちょこんと座って待っていると、先輩が救急箱を持って現れた。
「湿布でいいか。」
てきぱきと手当して、俺の頭を撫でる。
そして、お茶を差し出してくる。
味覚がない俺からしたら、恐怖以外の何者でもない。
震える手で恐る恐る手をつける。
「んっ...く...」
味がする。お茶の味。しっかりする。
先輩の顔が近くに来る。
「せんぱ、ぁ...ん。」
「んっ...。」
そして、口を放す。
気持ち悪さもなにも無くなった。さっきまであった嘔吐感が嘘のように。
口の端からお茶が少し零れ、二人の口が離れると...銀の糸が引かれる。糸が切れると、なんだか少し寂しい気がした。
「も、と...。」
なんて、言うほどだ。
俺は先輩が...好きなのか。それとも、欲に身を任せているだけなのか。
ーーーー
俺は、女にしか興味なかったはずだった。
なのに...あの日、俺が女にキレられた時...
俺は...陽に惚れた。
違う、頭では理解しても体が理解してくれない、陽を見る度に高鳴る鼓動は抑えられなかった。
そして、さっきのあの出来事...あれで理解した。
俺は陽が好きだ。
陽のあの笑顔に、俺は欲情した。
俺は...陽に欲情した。
目の前のこの小さく華奢で今にも折れそうなこの男を守りたい。そう思った。
ーーーーーー
先輩の、目が...俺を捉える。まるで逃がさないと言っているように。
先輩が俺に覆いかぶさってくる。そのタイミングで俺は、首に手を回した。
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