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episode.25
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リヴァイは、隣のテーブルから聞こえてくる話に反応した。
「それよりそれより…!兵長かっこいいよね!紅茶の飲み方とか、立体起動もかっこよかったしぃ…またあいたぁい…」
エレンが、"兵長"という人物について、さも愛しげに語り始めたのだ。
「兵長って、誰?」
「…気になります?」
シンの問いに、嬉しそうに顔を綻ばせ、兵長とはどんな人物かを次々に答えていく。
とにかく、エレンにとっての兵長は、かっこよくて強い、憧れの存在らしい。
リヴァイは持っているグラスを握りつぶしそうなほど手に力を込めて話に耳を傾ける。
「…なにしててもかっこよくて…俺なんかにも優しくて…たまーに褒めてくれて…ふふ…」
自分に普段全く見せることのない笑顔を、顔も知らない"兵長"には想いを馳せるだけで見せることができる。
よくわからない感情が、リヴァイの中にぐるぐると渦巻く。
「てか、兵長ってなに?軍隊とか今ないじゃん」
「…もう、その人、いないんです…」
エレンはそういうと、悲しそうな顔をした。
戦争にでも従軍して、死んだのだろうか。
「…でも、もう一度会いたいって、俺に言ってくれたから…だから、ずーっと、待ってるんです」
「…戻ってくるの?」
「んー…戻ってくる、のかなぁ?似てる人なら、すぐそばにいるんですけどねー、えへへ」
リヴァイは今度は、似てる人、というのが気になった。
「顔も名前も同じなんです。でも俺のこと、少しも覚えてないんですよー」
「そりゃ別人だからだろー」
「…ですよねー…あーもーのもーっ!」
エレンはぐいっとウーロンハイを煽る。
リヴァイも手に持っていたウイスキーを飲んだ。
「…エレンって好きな人いたんだね」
隣にいたハンジがそう言ってきた。
「だからなんだ。年頃なんだし当たり前だろ」
「いいの?"兵長"」
「あ?俺は兵長じゃねえって…」
そういえば、エレンは自分に会った時、兵長、と言ってこなかったか。
とすると、まさか、似ている人、というのは自分なのか。
「兵長…すきです…」
「あ、こら、エレン!そこで寝るな!おい!」
シンが困り果ててエレンを揺すっている。
似ている人が自分なのだとしたら、なにかあるだろうか。
リヴァイはそう考えて、すぐさま自分で否定する。
エレンは、"似ている人"が好きなのではない。
"兵長"が好きなのだ。
リヴァイはわけのわからない黒い感情を押し込めるように、またウイスキーを飲んだ。
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