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episode.35
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「…俺のこと…忘れないでください」
その言葉は、リヴァイの中で、あるものを蘇らせた。
*
「エレン」
「あ、兵長。今日は果物ですか」
「スープの方がよかったか」
「いえ。なんでも食べますよ」
「そうか」
エレンが死ぬ日は、刻一刻と迫り、日に日に痩せて、弱っていくエレンを、リヴァイは毎日見ていた。
「…お前は、何か、願いはあるか」
そんなエレンに、ふと聞いたのが、それだった。
「願い、ですか?なんでもいいんですか?」
「そうだな。俺が叶えてやれそうなことならなんでもいい」
「…俺が死んだら、俺のこと、忘れてください」
エレンは、今にも消えてしまいそうな、儚い笑顔で、そう言った。
「俺のことは忘れて、兵長は幸せに生きてください。それが、俺の、お願い、です」
「…それは本心か」
「当たり前ですよ」
「…本当の願いか」
「………はい」
「……それが、お前の、最期の願いか」
「………はい」
「………本当はどうなんだ」
「…………わすれ、ないで…」
ポロポロと涙をこぼして、布団をぎゅっと握りしめて、リヴァイの顔は少しも見ずに、そっとエレンは呟いた。
そして、今度ははっきりと
「…俺のこと…忘れないでください」
震える声で、そう言った。
「…わかった。約束しよう」
そしてリヴァイは、もう一つ、エレンに言葉を贈る。
「必ず、もう一度お前に会いたい」
そして心の中で、エレンに願う。
もう一度お前に会ったら、そこがもし、お前が笑える世界なら。
もう一度、お前の名を呼ばせてほしい。そして、今度こそ言わせてほしい。
今の俺が、言えない言葉をー。
*
「…エレン?」
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