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「何がやだ?」
柿狗くんの、軽く汗でじっとりする後頭部に額を押し付ける。
腕の中の柿狗くんの、速すぎる心音が徐々に落ち着いていく。
「やだ…」
拗ねた子供みたいな柿狗くんに、僕は笑みがこぼれる。
僕はこんな柿狗くんを、可愛いとか愛しいとか、そんな言葉でしか表現できない。
「僕がやだ?」
僕が聞くと、柿狗くんの体がビクッと跳ねる。
けれど、言葉にはしない。
僕がやだって言ったら、怒るとか、酷いことするとか思っているのだろうか。
ちょっと心外だし、へこむし、悲しくもなる。
「…じゃあ、生放送がやだ?」
「…ちょっと」
おや、ちゃんと答えてくれた。
ちょっとやだって事は、生放送自体は嫌いではないという事だろうか。
でもあんまりほじくると柿狗くん嫌がるだろうから、次の質問にしよう。
「搾乳機…昨日使った機械がやだ?」
「やだ」
おっと、これには即答だった。
見てる側も、少し引くほどの威力だったものね。
「また使いたいって言ったら、ダメ?」
「やだやだやだやだやだやだやだ」
「わかったわかった、わかったよー、柿狗くん」
腕の中で暴れようとする柿狗くんを、さらに強い力で抱き留めて、耳元でゆっくりと宥めてあげる。
泣いてしまったのか、ひくひくとしゃくりをあげていた。
「じゃあもうアレは使わない。柿狗くんが嫌なら、僕は使わない。ね」
僕が言うと、柿狗くんはうんと頷く。
全部が嫌になってしまったのかと僕は不安になったけれど、一番の原因は搾乳機のようでよかった。
他の、カテーテルやバイブなんかについても聞くことは出来たけれど、聞かなかった僕は卑怯者だ。
多分好きではないけれど、搾乳機ほど嫌というわけでもないのだと思う。
きっと僕が柿狗くんの傍にいることが、柿狗くんを雁字搦めにしているのだろう。
親から虐待される子供は、それでもそこに居場所を持ってしまう。
柿狗くんの生放送も、柿狗くんの居場所の一つになってしまっただろうし、それを嫌がれば「僕」という居場所も失ってしまう。
それが怖い柿狗くんは、嫌とも好きとも言えない。
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