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がちゃがちゃ、バタン!
「柿狗くん!!」
「ひっ?!」
ポーン。
柿狗くんの部屋の扉を開けて1番に目に入るベッドに、柿狗くんの姿はない。
その代わり、すぐ横で小さな声が聞こえた。
そして追って、ポケットからメールの着信を告げる音。
そんな全てを一瞬で把握しながら、僕はパソコンの前に座っていた柿狗くんをとにかく抱きしめた。
「柿狗くん柿狗くん柿狗くん柿狗くん」
ああ、もう、柿狗くんって言うの舌噛んじゃいそう。
でもそんなのどうでもいい、肩口に押し付けた鼻から柿狗くんの匂いを鼻腔いっぱいに吸い込むと、それだけで全てがどうでもよくなる気分だった。
呼んでも呼んでも呼びたりない。
どんなに抱きしめても抱きしめ足りない。
この3週間分を取り戻そうと身体が柿狗くんを求めていた。
柿狗くん!
柿狗くん!
柿狗くん!!!
「あ…」
僕とは対照的に、全く事態を把握できていなかった柿狗くんが、今ようやくなにが起こっているのかわかったらしい。
びっくりさせちゃったかな。
でもそんなこと気にしてる余裕もないくらい、柿狗くんを堪能するので忙しかった。
この腕の中で、温かい熱とドクドク脈打つ柿狗くんの心音。
本物だ、本物の柿狗くんを今抱きしめているんだ。
この3週間、どれだけ想像しただろう。
柿狗くんの匂い、形、熱。
それら想像の全てを凌駕するくらい、本物はどこまでも本物だった。
会わないなんて馬鹿なことを、どうして僕はしたんだろうね。
もうこの手から手放したくない。
ずっとこのままでいるー!
「う…」
柿狗くんの手が戸惑いながら僕の頭を撫でた。
あうう、柿狗くんが僕の頭を撫でている。
というか、僕は気付かないうちに泣いていたらしい。
久しぶりに会った友人がいきなり泣き出したら、それはもう戸惑うと言うか、引くよね。
「ご、ごめんね。なんか感極まっちゃって」
一旦顔を上げて身体を離し、柿狗くんを正面から見る。
変わらない柿狗くんの目が僕を見た。
ああ、やっぱり無理だよ。
とにかく今は抱きしめたい気分で、柿狗くんを再び抱きしめる。
ひたすら心地良い感触だった。
「会いたかった。柿狗くんは?」
「……」
答えない柿狗くん。
でもあんなメールくれたんだもの、柿狗くんだって僕に会いたいと思ってたはずだよね。
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