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⑪
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「お風呂あがりました」
「お、早かったね‥‥って」
長風呂も申し訳ないと早々にお風呂を出た俺は、リビングへ戻り遼さんに声をかける。
つーか、浴槽広すぎてびっくりしたわ‥‥しかも泡風呂とか何次元やねん‥‥。
キッチンからひょこっと顔を出した遼さんは、なにかに気づいて俺に近づいて来た。
「もうちょっと乾かさないと風邪ひくよ?」
「わっ‥‥」
後ろに回り、肩にかけていたタオルでゴシゴシと俺の頭を拭く遼さん。
‥‥なんか‥‥おかんみたいやな。
「まだまだ春なんだから、ね?」
「‥‥ふ、はい」
そう言った声が本当におかんみたいで、こんな事いつぶりだろうかと思っていると、遼さんが顔を覗き込んできた。
「‥‥初めて笑ってくれたね」
「へ、そ、でしたっけ」
「うん。良かった‥‥笑った顔、可愛いね」
そう言ってふふっと笑う遼さんにぶわわっと顔に熱が集まる。なんちゅーことさらっと‥‥!
俺は話題を変えようと話を変えた。
「って、てか!遼さん身長いくつですか?」
「ん?俺?んー‥‥180、は無いくらい?いや、あったかな?」
「は‥‥たっか‥‥」
俺が170ちょいだが、遼さんが隣に立つと小さく見える。
‥‥身長までイケメンとかもう勝てへんわ‥‥。
そんな取り留めもない事を話していると、拭き終わった遼さんがタオルを再び俺に掛け、ご飯にしようかと俺をキッチン横のテーブルに勧めた。
?!‥‥めっちゃ美味しそう‥‥!
テーブルの上には、ポテトサラダとデミグラスソースのかかったハンバーグ、そして卵スープ。
あの短時間でこの料理を作ったんか‥‥?!
俺、遼さんにご飯作れるやろか‥‥
久しぶりにみたちゃんとしたご飯に感動しつつ、
そんなことを考え、心配をしていると遼さんはキッチンからお茶の入ったグラスを2つ持って出てきた。
俺はあ、と思い、さっき座っていたテーブルを見ると既にさっきのコップは片付けられていた。
「あ、さっきのコップは片付けたよ、ごめんね、また作るね」
「あ、いや!すみません、片付けてもらって‥‥」
「ふふ、良いんだよ。さて、食べようか」
遼さんは俺にグラスを渡し、手を合わせた。
頂きます、と言う遼さんに合わせ、俺も手を合わせて頂きます、と言いハンバーグに口をつけた。
「?!!?うっま!!!」
「ふふ、ありがとう」
めっちゃ美味いやんこれ‥‥!?
俺は空腹を我慢していた反動と遼さんの料理の美味しさに、遼さんの料理をガツガツと食べ始めた。
「めっふぁふまいへふ!」
「ぷ、嬉しいけど食べながら喋らない」
「う、ふみません‥‥」
遼さんは食べながら、にこにこと俺を見ていた。
俺は恥ずかしかったが、欲求には耐えられず次々と平らげていった。
「ふー‥‥美味しかったです。ご馳走様でした」
「お粗末様。俺もこんなに美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
そう言って綺麗に俺が綺麗に平らげた皿を片付け出した遼さんに慌てて俺も片付けた。
良いのに、と言う遼さんに首を振り、一緒にキッチンまで行く。
‥‥キッチンも広かったのは言うまでもない。
✱✱✱
「じゃあ、お風呂入ってくるから、要くんは寝たかったらベッド使って寝ていいからね?テレビ見たいならリモコンはここね。ベッドはここを出て真っ直ぐ」
食器を食洗機に入れ片付けた後、遼さんは俺にそう告げてお風呂へ向かった。
俺は先に寝るのも、勝手にベッドを借りるのも申し訳ないとソファーに座って遼さんを待っている。
そして、改めて今日1日の事を考えていた。
‥‥本当に、夢じゃないんよな‥‥。
まだ、全然信じられない。
明日、起きたら全て夢だったりしてな‥‥
「ってあ、バイト先に連絡してへん!」
俺は昼はコンビニ、夜は居酒屋やバーで料理担当のバイトを掛け持ってきた。
遼さんには一旦全部のバイトを辞めるように言われ、話し合ったが俺が折れて辞めることにした。
‥‥あ、携帯家に置いてるやん、俺。
両親が家出してから、なにか連絡が来るかもしれないと暫くは肌身離さず持っていたが、この一ヶ月何も来なかった。
今ではバイト先からたまに連絡が来る程度だ。
‥‥おかん、おとん、どこやねん‥‥
はよ、帰ってきいや‥‥。
多分、もう会えないことは解っている。
けれどこの1ヶ月、ほんの少しの期待を持って生きてきた。
決して仲が悪かった訳じゃない。
むしろ仲が良かった二人だと思う。
なのにこんな急に‥‥
俺はじわじわと歪む視界に目を伏せて蹲った。
瞼の裏に、笑う両親の顔と、遼さんの顔を思い浮かべていると、ゆっくりと意識が遠のいていったー。
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