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吾輩は早瀬である(R’s、番外) 12
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「俺バンドとかやるつもりないんで…失礼します…」
「………」
昨日先輩にきっぱりとそう告げた
きっときつい言い方だったと思う
もう勧誘には来ないだろうな…
少し寂しく思う反面これでいいんだとほっともしていた
でも…
「早瀬ー!!早瀬ギターとかほしかったりしねえ?新しいの俺買いたいんだけどお金足りなくてさ~」
「………」
「うーん、初心者用ではないけど…高くもないし…結構使ったし…3万でどう?ね?あ、でも将来的にはプレミアつくから5万でもいいよ?」
「……なんでいるんですか先輩…」
「えぇ!?早瀬聞いてなかったの?だからギターを…」
「そうじゃなくて!!」
少し声を張ると先輩はじっと黙った
「…おれ…言いましたよね?バンド入らないって…」
「あぁ」
「なのになんでまだ来るんですか…」
「………」
そう尋ねると先輩は少し考えてから口を開いた
まっすぐこっちを見て、いつか生徒指導の先生から逃げるてる時に目が合った時のような目だった
「俺バンド勧誘云々関係なく仲良しの後輩に会いに来てるつもりなんだけど…」
「……?」
「お前のことなんか面白いなーって思ったし話してみたいと思ったから話に来てる、お前音楽詳しいし」
先輩は『篠田は洋ロックばっかだし、啓はJ-popばっかだし、茜ちゃんはジャ〇ーズばっかりなんだよ~』と笑って付け加えた
「それに俺だってバンドのメンバーだれだっていいわけじゃないんだぞ」
「………」
「俺はもうお前に決めたの、ぜったいお前をうちのキーボードにする」
「……知ってたんですか?…俺がピアノやるって」
先輩が意味ありげな表情を浮かべて俺の手を見ながらそういうから少しドキッとした
思っている以上にずっとやり手な先輩なのかもしれないと一瞬思った
のに…
「いや、お前の名前ネット検索したら出てきた」
「………」
一気に冷めた…もうこの人のいうことは信用しないとこの時決めた
「お前すげーのな、いっぱい賞もらってんじゃん?」
「……別に…」
家族の方がすごいから…と口に出しかけてやめた
自分から言ってみじめになる必要もない…
「それに早瀬ってあの早瀬だったんだな~俺お前の父ちゃんのCDもってるわ、かっこいいよなぁ~」
「………」
そして俺が『あの』早瀬の息子だとわかるとお決まりのセリフを先輩は発した
先輩クラシックとかも聞くんだな…
いっつもだ…あの早瀬の家の子、あの早瀬の息子…
また父と比べられるんだろうと思ったが先輩は違った
「でもさ、バンドに指揮者はいらないんだよな」
「……」
「俺はお前の方がうちにほしい」
またあの目だった、先輩は俺がメンバーにならないなんてこと一切考えてないようだった
それにそんなこと言われたのは初めてだった
ほかの家族と比べて、特に父と比べて俺の方を選んでくれる人なんて…
素直にうれしかった
「……あ、ありがとうございます…」
お礼を言うと先輩はニコッと笑った
しかし先輩はそれから突然突拍子もないことを口に出した
「よしっ、じゃあお前の家にいこう」
「はい…へ?……は?」
「ほら荷物もてよ、早くいくぞ」
「ちょ…え、家…!?」
すたすたと荷物をまとめて廊下へ出ていく先輩を追いかけるべく慌てて荷物をまとめる
まずい……家には今日…父がいる…
俺は先輩を止めるべく走り出した
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