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満たされていた。
少し前までは、とんでもない幸福感に満たされていた。
だが今車内が満たされているのはとんでもない香水の匂いだ。
この匂いの主は俺の意識が沈んでから程なくして車内にやって来た。
「くろとぉ♡久しぶりぃ」
オオカミ先輩が座ってる方の扉がばっと開いて春とはいえまだ少し冷たい風が車内に吹き込む。
「はぁ?ちょっと何よソイツ」
風と一緒に吹き込んだどぎつい香水の香りに俺の沈んでいた意識が呼び戻される。
「くろとの隣はまみが座るのぉ!ソイツ寄せてよぉ」
クソ甘ったるい香りにクソ甘ったるい喋り方。
声にはあからさまな嫌悪感が混ざっていた。
「ダメだ。前に乗れ。」
「なんでぇ?くろとぉ…!」
「嫌なら乗るな」
有無を言わさぬオオカミ先輩の声に女は少し怯んでぶつぶつ文句を言いながら扉を乱暴に閉めて助手席に乗り込んだ。
「まみ、寒い中1人で待ってたのに…こんなのって酷いよ…!くろと、今度前に話してたバッグ買って!」
「あぁ」
「やったぁ♡くろと大好きっ!約束だよ?ちょっと霧也ぁ、寒いから温度上げて」
理不尽な女の申し出にオオカミ先輩はテキトーな返事を返す。
それに気分を良くしたバカ女はうさぎのヘアゴム先輩に命令口調で話しかけると自分でぴっぴっと設定温度を上げていく。
「寒いなら汚ねぇ足出さねぇでズボンでも履けよ。コート着ろ、マフラー巻け。火に飛び込め。」
「グチグチうるさいなぁ。だから霧也は彼女できないんだよ?ねっ、くろと」
「黎斗、こいつ今すぐ殴りたい。」
聞いたことのないうさぎのヘアゴム先輩の声に少し身体が強ばる。
それを知ってか知らずがオオカミ先輩がぽんぽんと俺の頭を撫でる。
オオカミ先輩強いのに礼儀正しくて、おまけにめちゃくちゃ優しい。
かっこいいぜ…かっこよすぎて吐きそうだ
そう、俺は凄く吐きそうなんだ。
さっき一瞬嗅いだだけでも臭いと思ったのにバカ女が容赦なく設定温度を上げたせいで暖かい風に乗り後ろへ運ばれてくる威力を増した香水の香り
バカ女がイラつかせたせいで荒くなったうさぎのヘアゴム先輩の運転
運転に伴って激しく揺れる車体
全てが怖いオニーサンに捕まった時の
おさまりかけていた吐き気を蘇らせる
「あぁもうっ!くっさ!耐えらんねぇ!」
うさぎのヘアゴム先輩がそう叫んで車の窓を全開にしたのとほぼ同時に
「ぅ…おえぇぇぇ…」
堪えていたもの全てを
あろう事か憧れのオオカミ先輩の上で吐き出してしまった。
俺はオオカミ先輩の膝の上で嘔吐した絶望感と、バカ女に対する恨めしい気持ちの中でまたしても意識を手放した。
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