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高校生になった俺1
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「滝壺は元々ここの近くに住んでいたそうだ。みんな仲良くするんだぞ」
高校2年生になった俺、滝壺敦輝(たきつぼあつき)は地元に帰って来たのだった。
本当は戻ってくるつもりなんてなかったのだけど。
脚を故障させてから運動ができなくなりもぬけの殻になっていた俺に母が提案したのだ。
「実家戻ってみる?」
最初は面倒だし戻ってもいい事などないと思った。
あの日以来ここに帰りたいとはどうも思えなかった。考えるだけで腹の底に石を詰められたようにずしりと体が重く感じた。
ただ、母から言われた言葉を頭の中で反芻しているうちにこのままではいけないと思い帰省をするに至った。
7月という微妙な季節。実家に残っていた婆ちゃんのとこにお世話になる事にしたのだ。
あえて学校は少し地元とは離れた場所にした。
促され転校生の定番窓側の一番後ろの席に座った。
周りからは好奇の目がぷすぷすと刺さる。
正直あんまり嬉しくない
HRが終わった途端周りに人がどっと集まりだした。
「その制服前の学校のだよな!かっけぇ!」
「なあなあ前の学校どんなだった?」
おーおーでるわでるわ質問の嵐
その中でひときわよく聞こえる低くて耳に残る声がした。
「でっけーな、お前。身長何センチ?」
身長を聞いて来た前の席の男子はこちらをじいっと見ていた。
ガタイが良く程よくついた筋肉にぬらりとのびた大きな背。目尻は下がっているのに眉毛がキリッとしているからか威圧感がある。 運動部だったからかつい筋肉がついているとか気にしてしまう。
「すまん、挨拶が遅れた。俺は綿貫 勇二(わたぬきゆうじ)宜しくな、滝壺」
「敦輝でいい。宜しくな」
フッと目尻を下げて笑う綿貫に少し安堵を覚えにっと笑い挨拶をする。
それを見ていた周りの人達が途端に騒ぎ出した。
「おいこら何勇二お前抜け駆けしてんだ!」
「私らにも挨拶をさせろ!」
「私山口宜しく!」
俺が私がと言わんばかりにみんな一斉に話し出した。
俺は聖徳太子じゃねぇ。
………………………………………………………………………………
「なあ、敦飯食おうぜ。」
午前の授業でこっちの方が若干進んでる事に焦りを感じていた俺は声の主を見た。
敦輝から敦と呼ぶようになっていた。
椅子に長い腕を乗せにやり、という顔でこちらを見ている綿貫。
「綿貫手足長いし身長高いよな。何センチあるんだ?」
昼飯を食う時にはすでに綿貫とは大分打ち解けていた。 しかし俺は勇二とよぶより綿貫と呼ぶ方がしっくりくるから苗字で呼んでいる。
弁当の卵焼きを突く綿貫は ん?という顔をして
「まずは自分のをいうべきだな」
と今朝聞けなかった質問を再度してくる。
「170……3か、4か……そんくらいかな」
最近春に前の学校で測った時はそんくらいだった。
「でけぇな。俺は180」
聞いて来た割にそっけない返事。
いやいや、綿貫も十分でかいよな。この教室だけではないが背の高い奴が多く感じられる。
「部活決めたか? 男バレ来いよ」
弁当の白米をぽろりと落として綿貫を見る。
「意外だな、バレー部なのか!」
「お、来るか?」
俺の食いつきににっと口の端をあげる綿貫。如何にもバスケとかやってそうなのに意外だ。
「あー……いや、やめておく。俺中学で脚壊してんだ。」
だが理由を述べてきっぱり断る。 それを聞いた綿貫は一瞬目を見開いたように見えた。
「残念だが仕方ないな」
と肩をすくめそれ以上は聞かないという雰囲気を出しプチトマトを口に放り込んだのだった。
プツッとトマトの潰れるいい音が聞こえた気がした。
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