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掴んだ温もり2
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学校を休んで2日目。
病院に入院するほどのけがではなかったから数日は自宅療養をすることにした。幸い全く動けないわけじゃないから良かった。
寝てるだけってのは暇だけど早く治すには安静にしてなければならない。
携帯からゲーム音だけが響く静かな部屋。
あーあ、つまんねー。
--ーーーーーー--------------
暇つぶしにゲームをしていたつもりが寝ていたらしい。
手探りでみつけた携帯の充電は切れて画面は暗くなっていた。閉めたカーテンから光も入ってこない。
おそらくだいぶ寝ていたのだろう。今は何時だろうか。
「鍵くらい閉めなよね、危なすぎ」
もそもそと布団の中で蠢いていたらよく通る懐かしい声がきこえた。
布団から顔を出して声の方を向けば
「なんつー顔してんの、見舞いだよ。襲ったりしないから」
「んな事考えてねーよ」
薄暗い部屋の中に、暫く関わりを絶っていた相手が目の前のソファーから体育座りをしてこちらをじっと見ていることに驚きが隠せなかった。
思考が追いつかない。
「けーたい。連絡したのに返事ないから。死んだかと思って」
手元にあった携帯を指さしてそういう。
「こんくらいで死んでたまるか」
けっ と軽く悪態を吐く。
時計の針の音だけがやけに響いて聞こえる。
暗闇にぼんやりと浮かぶ八雲のシルエット。
すげぇ気まずい いつまで見舞いでいるつもりだよ
「ねえ、ヒーロー」
ぼんやりと天井を仰いで、いると声が掛かった。
「最近ずっと僕のこと避けてたよね」
返事をするまもなく淡々と話し出す八雲。ちらりと見れば表情は読み取れない。
「正直寂しかったんだよね、なんで突然突き放されたのかわからなくって」
「……」
「僕結構色々考えたからね?何が原因だったんだろうって」
「前から突き放してただろ…」
「ふふ、突き放し方が全然違うよ。 あんな優しいの突き放すのに入らないから」
柔らかい笑い声がぼんやりとした暗闇から聞こえる。
「でも、最近のヒーローは本当に僕を突き放そうとしてた」
「…」
「あれってさ」
人の動く気配がして横を向くと顔元の枕元に熱を感じた。
八雲の腕だ。ベッドの前にしゃがみ込んだのだろう。
「…僕を傷付けない為にしたんでしょ」
「違う」
「嘘つき」
ふわりと顔に何かがあたる。腕に顔を埋めたのだろうか。
うっすらとあまり香りが漂う。
「どうせ下手に付き合ってたら期待させちゃう〜とかこのままじゃいけない〜とか考えたんでしょ」
「…」
大体あってる…
「馬鹿じゃないの」
「あ?」
顔を伏せたままぼそりと暴言を吐かれた。
若干イラつきつつ返事をすれば
「馬鹿じゃないのっつってんの」
「馬鹿じゃねぇ、くそが」
「馬鹿だよ!」
突然大きな声で言われて少し驚いてしまう。
突然叫ぶのは心臓に悪いからやめろ。まじで。
「ヒーローは本当に馬鹿すぎるんだよ…」
「俺はお前を好きにならないのに一緒にいたらお前が」
「そんなお節介いらないんだよ!」
顔をあげた八雲と目が合う。
暗闇の中にキラリと光る瞳。
「お前、何泣いて…」
おずおずと手を伸ばすと八雲は俺の手をぎゅっと強く掴んだ。
「あんな…突然突き放されて…僕が簡単にまひろを諦められると思う…? 少し前まで楽しく話してたのに…」
ぼろぼろと涙を零し弱々しく言葉を紡ぐ。
「僕は…まひろといる時間が楽しくてたまらなかったよ?
なのに避けるし…マジ意味わかんない」
ぐすぐすと泣き崩れる八雲にどうしようもなく謝りたくなった。
冷たい八雲の手が俺の手を掴んで離さない。
その手を掴んで引っ張り上げて背中をさすった。
「うぅ、馬鹿ヒーロー。優しすぎ」
ぐすりと鼻をすすり一層泣く八雲の背中をさすり続ける。
「…俺は最近お前の気持ちに応えれないのにずっと一緒にいてそれでお前が辛い思いしてんじゃねーかって思ってた。」
話し出すと八雲は鼻をすすりながら耳を傾けているようだった。
「それならきっぱり断っちまった方がいいって考え始めた」
「…前みたいにお前に流されないで断った方がいいってさ」
へっと軽く鼻で笑うと拳が鳩尾に一発来た。
「……お前熱出した時嫌いなら優しくすんなって言ってただろ」
ギョッとしてぐしゃぐしゃの顔をこちらに向ける八雲。
「あれ聞いてたんだよ、だから考えた。」
八雲は視線を俺から外し暗闇をぼんやりと見つめる。
「でも….まぁ、なんだ…お前に絡まれてた時が結構煩くて逆に最近静かすぎてむかつくっつーか」
「落ちつかねぇっていうか」
何言ってんだ俺
気恥ずかしくなりぼそぼそというと
「ふ、ふふっ」
八雲の背中が大きく揺れた。
ふわりとかすかな甘い香りとともに八雲のビー玉のようなキラキラした瞳が俺をとらえた。
「やっぱりヒーローは優しすぎるよ、僕は今回の件で分かっちゃった」
目尻を下げて優しく笑うと
「!?」
柔らかな感触。 そう口。 接吻。 接吻? え?
顔面ちっかっ はぁ??
伏せた長い睫毛がこちらを見据えた。
思いっきり壁にゴンって音がするほど後ずさって驚愕の表情を浮かべる俺。
いや、どさくさに紛れてこいつなにしてんだ
にっと今までにないほどの蔓延の笑みをこちらに向けると
ぴょんと立ち上がり
「ふふ、ヒーローに突き放されて気付いたよ。
僕はあれくらいじゃヒーローを諦められないってね」
「だぁいすき、ヒーロー。これからもよろしくね!」
そう言ってウィンクをすると一度振り返り颯爽と部屋を出ていった。
暫く呆然と八雲の出ていった部屋の扉を見つめていた。
ハッと、我に帰り今起きたことを頭の中でフラッシュバック。
え、え、ありえん。 完全復帰じゃん。部屋を出るときのあのドヤ顔……
「やっぱむかつく!!」
いらいらする 懐かしい感覚 むかつくは、やっぱ。
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