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ビストロ雨立
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「よーっし、英兄!準備はいいか!」
「ばっちりです楽隊長!」
「これから我々は親孝行ならぬ兄孝行で1日家事代行をする!ゆくぞ!」
「いえっさー!」
今日の雨立家のリビングでは、エプロン姿の楽と英樹が向き合って、某巨人を駆逐するアニメの心臓を捧げるポーズをノリノリでとっていた。
そんな楽しそうな2人を、里冉はソファに座りながら微笑ましげに見つめる。
長男に毎日の家事を任せっきりにしてしまっていることを気にしていた楽が、それを英樹に相談した末こうなったのである。
白と樹も誘ったが、「予定あるから…」「兄貴のためとか普通に嫌だ」と断られたらしい。相変わらず辛辣な末っ子だ。
正直、里冉的にはめちゃくちゃ不安なのだが、せっかく自分のために可愛い弟達が張り切ってくれているのだから無下にはできず、見守ることにした。
特に不安なのが、夕飯。
朝食は昨日の残り物とご飯、昼食は各々で食べたのでいいのだが、問題は夕飯だ。
楽はそれなりに器用なので心配していないが、英樹が…所謂デスクッキングをするタイプの料理音痴なため、まともなものが出てくる予感など微塵もしない。
「本当に任せちゃって大丈夫……?」
「まっかせとけぇっ!」
「任せてください兵長!」
「えっ俺兵長なの。…なら掃除くらいすべき?」
「今日は休んでていーのー!大人しくしてて兄貴!」
「ふふっ、はいはい」
もー!!と怒る楽がめちゃくちゃに可愛くて、里冉は大人しく休むことにした。
「じゃあまず朝昼の分の洗い物から!」
「了解しました隊長!」
賑やかな日になりそうだ。
「隊長ー!掃除終わりましたぁ!!」
「ご苦労!よし次、夕飯作りだ!」
本を読みながらその会話を聞いていた里冉は、思わず心の中で「きた…」と呟いた。
「今日のメニュー……考えてなかったな……どーする英兄?何食べたい?」
「うーん、お肉?」
アバウトだなぁ。英樹の答えに軽くずっこける。
「んじゃメインは肉料理で!」
「オーダー!肉料理ぃ〜!」
「ウィームッシュ!」
今度はビストロSM〇Pかよ!懐かしいな!と心の中でツッコんで、なんとか口出ししないよう耐える里冉。
本人達は楽しそうなので、まあいいか、と再び本に視線を戻した。
……英樹がオーナー役ということはらっくんがシェフ?
「肉料理……何が作れるかなぁ」
「豚肉発見!」
「……しょうが焼き!」
「いーねー!」
お?まだ簡単なの選んだぞ。よしよし、この調子。
「んじゃ俺作ってるから英兄付け合せ頼むな」
「おっけっけー」
楽シェフ……!!
「兄貴〜」
「おぁ、どうしたの?」
「しょうが焼きのレシピ口頭で頼む〜」
「んふふ、俺の力は借りないんじゃなかったの?」
「いーの!レシピ聞くくらいはセーフ!」
「そっかぁ。えぇとじゃあまず…」
・醤油、みりん、三温糖、酒、しょうが(今回はチューブ)を用意して合わせる。
・豚肉は酒をまぶし5〜10分置いておく。その間に玉ねぎを一口大にくし切り&繊維に逆らってすりおろしに。すりおろしたものは先ほどのタレと混ぜる。
・筋を切るために肉の両面に軽く包丁を入れる。
・フライパンに肉を並べてから火をつけ、色が変わるまで焼く。
・くし切りにした玉ねぎとタレを加える。火を入れすぎて固くなる前に肉を皿に盛り、残ったタレを玉ねぎがべっこう色になるまで煮詰める。
・付け合せと共に皿に盛って完成
……というレシピを、あまり料理経験のない四男の調理スピードにあわせて伝える。
いつもなら、すりおろし玉ねぎ入りのタレに肉を漬け込むところからやるのだが今回は時短優先で。
同時進行で味噌汁も作らせたら案外順調にできたので、楽の手際の良さを里冉は少し見直した。
今度からたまにお手伝いしてもらおうかな、とも思った。
どうやら里冉に似た器用さなようだ。楽からやらないだけで、やらせるとなんでも出来てしまうあたり、何気に一番長男似なのかもしれない。
「できたぁ!」
「おつかれさま。おー、美味しそうだねぇ♪」
「だろぉー?さすが俺」
「やれば出来る子だね」
「ふふんもっと褒めてくれてもいいんだぞっ」
できるだけ調理に関わらないようにしつつ野菜の下準備などをしてくれていたらしい英樹ごと里冉は2人を抱きしめて「よく出来ました〜♡」と頭を撫でた。
体を離すと、素直に嬉しかったらしい2人の赤い顔が見え、かわいいなぁともう1度頭を撫でた。
「夕飯できたの?へぇすごいじゃん美味しそう」
「おーすげー英樹いんのによくここまでできたなぁ」
匂いにつられてリビングへと下りてきた白と樹が、食卓に並べられたそれを見て感心する。
「どや!ほぼ俺が作った!」
「ほんとに兄貴手伝ってないの?」
「おう!」
「作り方だけ教えてたけど、実際の調理は全部この2人だよ」
「へぇ〜」
「お前らやれば出来るんだなぁ」
食卓に5人揃うと、里冉が「いただきます」と手を合わせる。それに続いて4人も手を合わせ、「いただきます!」と声を揃えた。
「おあ、まじで兄貴のしょうが焼きの味だ」
「それ俺がしょうが焼きにされてるみたいだからやめてくれないかな」
「ぶはっ、食べてる時に笑わせんなよバカ兄」
「ふ、ふふっ…兄貴のしょうが焼き…」
「ちょっと何ツボってるの樹」
「うまっうまっ」
「あ、ちょ、英兄それ俺の!」
楽の作ったしょうが焼きは、いつもとは違って特別美味しかった。
…少し砂糖が多い気もするけど。
食べ終わると、里冉は1日頑張った2人を両隣に呼び寄せる。
「ビストロS〇APなんでしょ」
そう言って、楽と英樹の頬にキスをプレゼント。
「…!」
「ふふ、2人とも今日はおつかれさま、ありがとね」
「冉兄ぃぃ…!」
「兄貴ぃぃ…!」
末っ子には冷ややかな目で見られていたが、2人が嬉しそうなので良しとしたのだった。
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