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焦燥⑤
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どうやら先ほどの音をたまたま聞いた教師が、注意しに来たらしい。
白崎先輩ははっと我に返り、手を離した。
「…月島君…急に転ぶなんておっちょこちょいだな、平気かい?」
人形みたいに貼り付けたような笑みを浮かべて手を差し出してきた彼は、俺がドジを踏んで転んでしまったのを心配するような演技を咄嗟にして見せた。
つくづく気持ち悪い奴だ。
ここでこの教師に、今までに彼がやってきたことを全部ばらしてやろうかとも思ったが、どうやら彼は『大人に好かれるタイプ』の人間であるらしい。
俺の言う事なんて信じてはくれないだろう。
差し出された手をはたいて、彼を押しのけて乱れた制服を直した。
楽しそうに話し始めた二人をよそ目に、無言で教室を後にしようとする、が。
「待ちなよ、月島君」
奴の声に阻止されてしまう。
足を止め、冷静を装って振り返る。
「好きという気持ちに確信が持てないような相手なんか、やめてしまった方がいいよ」
「…しつこいな…
白崎先輩、人に嫌われるタイプですね。気を付けた方が良いですよ」
『お、恋バナかー?』と茶々を入れる教師と、何か言いたげな様子の白崎先輩を無視して、背を向ける。
「………絶対に後悔させてやる」
彼がそう言って、不気味な笑みを浮かべていることにも気付かずに。
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