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火照り⑧
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「おはよ」
重い瞼をゆっくりと開くと、ぼやけた世界の焦点が徐々に定まってくる。
西洋の絵画と見間違えんばかりの、眉目秀麗な彼の微笑む姿には陶酔感に近い感覚を覚える。
「……おはよう」
身体を起こした時に走った腰の痛みが、昨日の夜の激しさを物語っているようで。
痛みに顔を顰めたことに気付いたのか、彼は俺の肩をそっと押して再び寝かせてくれた。
「昨日はごめん…俺、どうかしてた」
無造作に乱れた前髪の隙間から、焦りをチラつかせた瞳がこちらを覗いた。
「…いいよ、平気。でも、どうしてあんな風になっちゃったわけ?」
「一言で言うと、……不安と嫉妬?」
自問自答するかのようにそう答えた彼は、優しく俺の唇をなぞった。
「……ミヤ先生って、結構根に持つタイプだよね」
「なっ…、そうなのか?」
「うん、コテージ旅行行った時からずっとソワソワモジモジしてる。何だかミヤ先生らしくない。」
その言葉に、バツが悪そうに頬を掻いて、うーんと唸った。
「それは、宵が相手だからだよ」
「俺が?」
「こんなに素敵で可愛い奴と付き合ってたら、そりゃ執着もするし、俺大丈夫かなって不安にもなるよ」
「…普段は自信満々で偉そうなのに、恋愛に関してだとナヨナヨしてるんだね」
ニヤリと笑ってやると、不機嫌そうにデコピンをしてくる。
「お互い、相手のことになると周りが見えなくなるって事だ。
昨日の奴、もっとボコボコにしてやれば良かった。」
「いやいや、一応教員ってこと自覚しろよな。問題起こされると俺が困るよ。」
「……ごもっともです。」
そう言うと彼は深いため息をついて、上に覆いかぶさり抱きしめてきた。
静かな空間、無機質な空調の音。
しかし確かに彼の体温は側にあって。
「宵が好きすぎてどうにかなりそう」
「……もう十分どうにかなってるよ」
その言葉に彼はふっと笑った。
うなじに息がかかりくすぐったい気持ちになる。
「朝、家を出て行く時も夜に帰ってきた時も宵がいればいいのに」
「何それ、プロポーズ?」
俺は冗談のつもりで言ったのだが、否定をされなかったために無性に小っ恥ずかしくなり居心地が悪くなる。
「焦り過ぎだろ、かわいー」
耳にキスをされ、頭をくしゃりと撫でられる。
ただぽつりぽつりと言葉を交わすだけのこの時間が、心の底から愛おしく感じた日であった。
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