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視線③
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「お待たせしゃっしたー 特製パンケーキでーす」
「ちゃんとやれ」
やる気のない接客をしていると、他クラスの生徒に喝を入れられた。
こんな格好をしている事も含め、安いパンケーキを提供するだけの代わり映えのしない内容に、正直飽きが来ていた。
「いやー、2組がコスプレ喫茶やるって聞いた時は完全にネタ枠だと思ってたけど……」
「な、イイもん見れたな」
ニヤニヤとこちらを見てくる意味に気付いて、嫌気がさしてくる。
トレーで奴らの頭を叩くと、大仰に痛がったがそれも無視して。
「ねえ、そこのかわい子ちゃーん」
踵を返して歩き出すと、手首を掴まれてそう呼び止められた。
「何すか」
「えっなになに、超不機嫌じゃん!せっかく可愛い格好してるのに勿体ねえー!」
ギャハハと頭の悪そうな笑い方をした彼らは、見ない顔だった。きっと外部生だろう。
「ね、延長料金払えばオプションとか付いてくるの?」
「付かないです、ここ曲がりなりにも学校っすよ。
そういう事したいならキャバクラとか行ったら?」
「素っ気ねえなー、
あ、じゃあ休憩時間は空いてる?個人的な行動なら別にいいだろ?」
「無理です、すみません。で、注文は?」
「んー、君!」
その言葉に、寒気にも近い感覚が背筋を走った。
このようなキザな言葉を発していいのは漫画の中の主人公くらいだ。
─ん?
─何か、違和感が……
「!!?」
ふと、違和感を感じたので下半身を見やると、男の手がまさぐるように往復していることに気付き、戦慄する。
「…何触ってんだよ!」
「おっと、客に暴力?それはまずいんじゃねーの?」
撫で回す手を剥がそうと思ったが、ぐっと堪えて助けを求めるように周囲を見渡した。
接客をしているクラスメイトは会話に夢中で、全く気付く様子が無い。
「…で、どうする?」
「っ……」
─気持ち悪い……
「お待たせしましたー!特製パンケーキです!」
その瞬間、耳に飛び込んできたのは、
「嘉音……!」
思いもよらない奴の声だった。
「はぁ?頼んでねーよこんなの」
「サービスでーす!それと、この人お借りしますねー」
嫌悪感丸出しで男は嘉音を睨んだが、
言葉巧みにそれをかわした。
嘉音に手を引かれ、教室を後にする。
ごった返す人混みの中をかき分けていったおかげで、上手く姿が眩ませたようだ。男は追いかけてこなかった。
階段の踊り場まで来た所で、手を離される。
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