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「柊は悪くない…」
柊に抱きつくように背中に腕を回した。
「蒼衣……」
「俺が、ちゃんと、柊の話を聞いてれば良かった…俺全然気付いてなかった。倉庫の前に行って、中に入ろうとするまで何とも思ってなかったのに…入ろうとしたら…なんか、怖くて入れなくて…」
あの時のことが、フラッシュバックした訳じゃない。
でも、忘れられてると思ってたけど、全然忘れられてなかった。
無かったことになんて出来てなかった。
何でもないように過ごしてたけど、あの時の恐怖は、俺の中に残ってた。
俺が気付いていなかったことに、柊は気付いてくれてた。
目の前が真っ暗になった時、声が聞こえて、温もりを感じて、そしたら、真っ暗だった視界が明るくなった。
「柊が来てくれて、本当に良かった。あのままじゃ俺…」
回した手に力を入れると、柊がぎゅっと抱き締め返してくれた。
心底安心する。
安心したら、涙が出て来た。
「っ……」
「泣いてる?…蒼衣?」
「…ごめん、、」
「大丈夫。大丈夫だから…」
ぽんぽんと背中を叩かれて、ずずっと鼻をすする。
蒼衣は、俺が思ってるよりも、
ずっと弱くて、
ずっと強い。
俺は優しく、蒼衣を抱き締めた。
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