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「その先輩の名前覚えてるか?」
それは唐突な質問だった。
泣き過ぎて腫れぼったくなった目を冷やした方がいいと海に渡された、濡らしたタオルを目元に当てながらきょとんとした。
そして名前を言おうとしたら、
「………聞いたはず、なんだけど…」
全然思い出せない。
「何年生かも分かんない?」
「…」
俺は両手首を見つめる。
腕を縛られた。先輩自身のネクタイで。
何色だった…?
「ネクタイ、見たけど、暗くて…」
「奏那、今日はもう休ませてやろう。幸い明日は土曜日だし、学校も休みだ」
「そうだね。明日も明後日も一緒にいるから」
笑って言ってくれる柊にまた涙が出そうになった。
俺の涙腺壊れてるな。
* *
海side…
蒼衣の部屋を出て、奏那と共用スペースへ。
そこには、先程までいなかったはずの朔弥がいた。
「いつの間に戻ってたんだ?」
「ちょうど今。蒼衣の部屋覗こうと思ったらもう休ませようって聞こえたから。2人が話、聞いただろうしと思って」
「あぁ。予想当たってた。蒼衣から直接聞いた。で、そっちはどうだった?」
「居なかったよ。出て来たのは同室者の一翔ってやつだった。まだ帰って来てない、今日は遅くなるとも言ってたって」
「蒼衣は相手は"先輩"って言ってた」
「名前は?」
「分からないって」
伊吹を問い詰めようにも、本人が今どこに居るのかが分からないんじゃどうにもならない。
初めて会った、あの体育祭の時から、嫌な感じはしていた。
それなのに未然に防げず、蒼衣を傷つけられた。
本当に許せない。
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