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「俺っ…泣いてばっかだね」
ぐいっと涙を自分で拭った。
強くならなきゃと思うのに、全然上手くできなくて。
「蒼衣。
こんなことに、慣れちゃだめだよ。蒼衣に起こったことは、当たり前のことじゃない。蒼衣には全く非がない。泣いて当然だし、強くなって我慢することが良い事だとは俺は思わない」
真っ直ぐに見つめられて、拭ったばかりなのにまた涙が溢れた。
「ありがと……」
出した声は掠れてて、小さくて、ちゃんと聞こえたか分からないけど、柊は笑ってくれた。
そしたらガチャンと玄関の方から音が聞こえてきた。
「ただいまー」
「朔弥、おかえり」
「じゃーん!」
朔弥は口で効果音を出しながら、ガサッと袋を掲げる。
「何?」
「ケーキ買ってきた!売店のじゃなくてちゃんとしたケーキ屋の!…って蒼衣泣いてる?」
「や、大丈夫…」
「……美味しいケーキ屋、先輩に教えてもらったから美味しいはず!はい!」
朔弥はそれ以上何も言わず、持っていた袋を渡された。
「え…」
「蒼衣の為に買ってきたから、蒼衣が最初に選んで!いちごのショートとチョコレートケーキ、モンブランとミルクレープ!」
袋の中の箱を取り出して、選んでと急かしてくる。
「じゃあミルクレープがいいな」
「おっけー!じゃあ俺はチョコレート!柊はショートケーキな!」
「何で俺には選ばせてくれないの。っていうか朔弥は余ったのでしょ」
不満げに声を漏らす柊に笑ってしまう。
「だって俺チョコがいい。柊ショートケーキはやだってこと?」
「…そうじゃないけど」
「じゃあいいじゃん!実は海にモンブランかチョコが良いって言われてんだよ」
「あー…はいはい。ショートケーキでいいよ」
この後、帰ってきた海も俺たちの部屋に呼んで、俺を気遣ってか食堂には行かず部屋でご飯を食べて、ケーキも食べて、お腹いっぱいになって、幸せな気分になった。
本当に俺は友達に恵まれてるなと改めて思った。
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