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どうにも、最近はサボってばかりな気がする。
教室を去る手前、口実に保健室を使わせてもらったが、九郎と顔をあわせるのはどことなく憚られる。かと言って屋上まで足を運ぶ元気もない。
だから俺は、教師が来そうにない、特別棟の空き教室を目指した――はずだった。
ホコリ臭さに眉をしかめる。じめじめとした、気持ち悪い空気が肌にまとわりついた。身をよじれば、かたく冷たい床の感触がした。
「んー……」
定まらない思考の中、物憂いまぶたを開く。
うっすらとホコリが積もったくすんだ床。暗幕にくるまれた部屋。教室と同じ間取りだが、机はひとつもない。
俺はいつの間に寝てしまったのだろうか。
つーか、今、何時だ……?
「……ッ!?」
身体を起こそうとして、まったく力が入らないことに驚愕する。携帯を取り出そうとポケットへ回そうとした手も、後ろ手でかたく縛られていた。
状況の異様さに気づいたときには、すべてが手遅れだった。
「おーりはーらくーん」
俺を呼ぶ、心底愉快そうな声。笑いをこらえきれていないそれは、聞き覚えがあった。
カツン、カツン、教室の隅から人影が近づいてくる。
息を殺し、身をこわばらせて影を見上げる。影は横たわる俺の傍にしゃがみこむ。
「そんなに怖がらなくてもいいのに」
くすくすと耳朶を擽る柔らかな声が降る。影から黒い手が伸びて、俺の目にかかる髪をゆっくりと耳にかけた。
どくりと心臓が鳴る。
触られた場所が、いやに熱い。
手が耳から離れることはなく、今度は耳たぶや穴の中を執拗に触りはじめた。
「や、めろ……!」
寒気に似たものが全身を駆け抜ける。それは下半身で膨れ上がって、腰のあたりでぞわぞわと這いずり回った。身をよじって逃れようとしても、左右に揺り動くだけで、身体自体、使い物にならなかった。
俺の反応を見た影は、嬉しそうに俺の頭を撫でる。
「媚薬、効いてるみたいだね」
「び、やく……?」
うわごとのように零した吐息は熱に浮いていた。動かない身体は微細な痺れにおおわれ、ただただ気だるい。
影は俺に覆い被さると、何度も何度も、触れるだけのキスをしてきた。
「んっ……」
「僕たちの邪魔は、誰にもさせない」
何度も、何度も。
「いつも折原君の傍をうろちょろしてる佐保にも、彼氏面してる西永にも、誰にも」
ギラギラとした瞳が、痛いほどに俺を射ぬく。俺が欲しくてたまらないと。誰にも渡さないと。目だけで、そう俺に言ってくる。
「なんでだよ……」
なんで、なんて。
俺が言う資格なんてないのかもしれない。
俺はまた、コイツの気持ちに甘えて、胡座をかいて、ただで愛されようとしていたのだろうから。
「葛西……ッ!」
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