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「…………?」
誰かの声が聞こえたような気がして、少しだけ頭をもたげる。
誰かが俺を探しているのかもしれない。
気を張り詰めて耳を澄ましてみるが、葛西の荒い呼気と、耳鳴りのような静寂が広がるだけだった。
気のせいか――?
自嘲気味に零れた吐息が甘い考えを吹き飛ばす。
どうやら、早く解放されたい一心で聞こえた、ただの幻聴だったらしい。
暗闇。埃くさい床。熱い身体。まさぐる手。痺れる両腕。躍る舌。飛び散る白濁。欲情した瞳。
ここがどこなのかもわからない。
今が何時なのかもわからない。
いつ解放されるのかもわからない。
助けは、来ない。
どれもこれもないないづくし。先のまったく見えない状況に絶望したくもなる。いっそ舌でも噛みちぎってみようか――。
俺が一瞬でもそんな思考をちらつかせたことに気づいたのか、葛西は食むように俺の唇を奪うと、蹂躙しつくすような執拗さで舌を絡めてきた。
決して上手いとは言えないキスだが、葛西の痛いほどの気持ちが雪崩れこんでくる。
鈍い光を放つ葛西の目。お互いに、じっと見つめあいながら、唾液がぐちゃぐちゃになるまでかき混ぜる。
俺はなにも言えないまま、言わないまま。
流されるように、受け入れる。
愛されるために、受け入れる。
後頭部に回されていた手がうなじに降りて、背中から尾てい骨まで滑っていく。
「っは……ぁ、」
割れ目に指を這わせ、皺を伸ばすようにくるくると撫でたあと、つぷりと侵入してくる。かたく閉じていたそこが異物にわななく。
「きついね……っ」
葛西は興奮しているのか、語気を荒らげて、夢中になって指を掻きまわす。
さんざん弄られ高ぶった身体は、痛みこそなかったが、自分の意思とは関係なく動きまわる違和感に、一種の気味のわるさを感じずにはいられなかった。
違和感は、指が奥へ押し進む度に増していく。
「……っ?」
なにかが、違う。
この間と、なにかが。
「――っひぁ!!」
やがて葛西の指がしこりを弾くと、脳髄から爪先にかけて、強い電気が流れる。
頭がおかしくなりそうなほど気持ちいい。
実際、腰が勝手に動き始めているし、自身も腹につきそうなほど反り返っている。
気持ちいいのに。
その気持ちよさに比例して、胃ごとひっくり返して吐きたくなるほど気持ちわるかった。
「っひ、やだ、や、ぁ……!!」
気持ちよくて、気持ちわるい。
正反対の気持ちがごちゃ混ぜになって、なにがなんだかわからなくなる。
身体はおかしいぐらいに高ぶっていってるのに、心は冷めていくばかりだった。
これは、なんなんだ……?
腸内を蠢く単純な違和感ならば、今だって、西永のときだって感じていた。気持ちわるいと言えば気持ちわるいが、今感じているものとはまったくの別物だ。
――ずく、と心臓が悲鳴をあげた。
そこでやっと、違和感が、下半身ではなく、胸に巣くっていることに気づく。
それは違和感というよりは、嫌悪感に近いものだった。
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