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犬も食わない:来栖side
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「――頭髪に制服の着崩し、更にピアス。喜べ、てめェはこのまま指導室行きだ」
朝の清涼な空気を容赦ない委員長の声がぶったぎる。オレは絶望的な表情を浮かべている面識のないセンパイに心の中で舌を出した。御愁傷さまーっす。
風紀委員会によって定期的に行われる朝の抜き打ち検査は、もはやこの学園において恐怖の対象になっていた。寝ぼけまなこな生徒ですら姿勢を正して校門をくぐるほどだ。ナニが怖いって、校門前に仁王立ちする委員長と生活指導の岩男先生のウソみたいな最強タッグ。この二人で学園牛耳れんじゃねーのってくらい恐ろしい。とにかく目をつけられたらいろいろなことが終わる。
風紀委員に選ばれた当初は面倒くせーなって思ってたけど、新役員の顔合わせでその考えは一変した。
『二年一組、折原明人。よろしく』
烏の濡れ羽色の髪に、女みたいに赤い唇。綺麗な顔立ちに似つかわしくない、よろしくともなんとも思っていなさそうな胡乱な目が印象的だった。それは深くには立ち入らせないと明言していた。
淀んだ黒目と向き合う。
この目に自分だけを映したいと思った。
今まで適当に抱いてきた女にすら抱かなかった愛だか恋だかの片鱗が見えて、少しだけ動揺した記憶がある。
あとはこれが“そう”なのかと納得するだけだった。
委員長集会の度に後輩の立場を利用してやや馴れ馴れしく絡んでみたものの、やっぱりセンパイはちっともオレに靡かなかった。センパイはノンケだった。ホモばっかの男子校だから女に取られる心配はなかったけど、同時にオレが入り込める隙もまったくなかった。毎日センパイがホモになりますようにって仏壇にお祈りしたけどダメだった。夢の中で先祖様に罰当たりだって怒られて終わった。
ナニが言いたいかって、オレの中じゃあセンパイは誰のモノにもならないハズだったってこと。
それなのに、今――。
「今の違反者って誰だったっけ」
「三年四組の長瀬俊也先輩だ」
「えーと、三年四組の……あった。さんきゅ、西永。つーかお前、よく先輩の名前まで知ってんなー」
「ふ、特に褒められることではないが、お前の役に立てたのならそれでいい」
「っ、西永……」
んだよこの折原センパイと西永センパイのホモっぷり!!!!!!!!!! ぜんっぜんおいしくねーよ!!!!!!!!!!!
つーかほんとナニ、マジでナニ、西永センパイの手が折原センパイの腰と髪をなで回してるように見えんだけどこれはオレの幻覚かナニかなんすかねえ? いや確かに毎日健全に折原センパイで妄想して抜いてるけども。
と、背後から禍々しい気配。肌がピリピリと粟立つ感覚とともに背筋が一気に冷える。振り向くと委員長がものすごい形相で西永センパイを睨み付けていた。うっわオレの妄想じゃなかったっぽい。思わず空を仰ぐ。
委員長の怒鳴り声で小鳥のさえずりが掻き消える。生徒が泣きそうな顔で通りすぎる。委員長のそばにいるクソみたいな高宮の顔を見ても不思議と憂鬱な気分にはならなかった。今のオレにはむしろ心地いいくらいの状況だった。
あーあ、折原センパイはほんとに、
「うふふふ、おりちゃんはイケナイ子だねえ~~~」
「っわ、春野センパイ」
背後から首に回された手に体重がかけられる。背中をのけ反らせて力に逆らうことなく受け流す。本気で絞めようとしてくるところ性格が悪いどころじゃない。ふわり、ショートケーキみたいなくっそ甘い香りが漂ってきて吐きそうになった。おえ。
「シローをあんな風にしちゃうなんて、楽しくてしかたないよね、ふふ」
「相変わらずシュミ悪いっすね」
「うるさいよお、駄犬」
駄犬て。
春野センパイの女王サマっぷりにはもう慣れた。折原センパイの前だともうちょっとマトモなのにオレの前だと駄犬だのなんだの暴言がヒドイ。間違ってもこの人にだけにはひれ伏したくない。
「それでえ、くーちゃんも指をくわえておりちゃんを見てるわけだ~~~この変態」
「くーちゃんとか気持ち悪いんでやめてもらってもいいっすか、あと最後だけマジなトーンやめろ」
グサリ、悲しいくらいの図星を指された。反論できない悔しさに、【風紀委員会 鉄の掟 第六則:後輩は先輩を敬うべし】を無視して悪態をつく。本当は三メートルくらいぶん投げたいのを抑えて、首から春野センパイを引き剥がした。
ちらりとあの二人に視線を向ける。二人は相変わらずイチャイチャしていた。うらやましい。割り込みたい。
「おいッ、そこのてめェ違反@くぁせhふjkmnwwwww!!!!!!!」
あとそろそろ委員長がヤバい。
なんつーか、やっぱ西永センパイと折原センパイの間に入り込めるヤツなんていないっつーか、誰も邪魔できないっっつーか、
「あ、折原くん、おはよう。今日はちゃあんと時間通りに来れたから、あとでバイブつっこんでね! あと西永くんは死んで」
普通にいたわ。
佐保センパイ、噂通りマジで佐保センパイっすわ。もう清々しすぎてお手上げっすわ。よくもあんな爽やかな笑顔でエゲツねーこと言えんなあの人。「はい、おはようのキス~」佐保センパイふざけんな間接キスでいいからください。
で、折原センパイのちんこ独り占めしてるってマジ?
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