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犬も食わない 02
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八時五十分まで遅刻者のチェックをしたあと。委員長と西永センパイは違反者の待つ指導室に、春野センパイと高宮は今日の検査報告をしに教務室に、オレと折原センパイは違反者の名簿を整理するために会議室に向かった。
「今日の委員長は一段と怖かったっすね~」
「ああ、どうしたんだろうな」
アンタのせいだよ、と明後日の方向に舌を出す。そうこうしている間に会議室に到着。今日はどうやってセンパイを口説こうかな~なんて考えてれば、背後で扉が閉まる音と。
――――ガチャリ。
鍵の閉まる音がした。
「え、」
振り返ってオレは愕然とした。
「来栖、お前、ずっと俺のこと見てただろ」
だってセンパイがとんでもなく妖艶に笑ってたから。「まあ、いつものことか」なんて、オレがセンパイに見とれている間にも、センパイは舌を舐めながらオレとの距離を確実に詰めていく。
「え、は、」
ようやく口から飛び出たのは、意味のわからない状況に対する意味をなさない言葉の塊だった。
オレがセンパイに触れられるか触れられないかってところで、センパイは一度、焦らすように止まってみせた。
「“俺”が欲しいか?」
センパイがオレに向けて手を伸ばす。ピンク色のこぶりな爪、可愛い指先が踊る。それは甘やかすように頬を撫で、挑発するように顎をくすぐった。
ああ、オレ、誘惑されてる。
「……ほ、しい、っす」
口から出たのはうわごと同然の本音。センパイは依然として呆けたままのオレの首を引き寄せながら吐息でくすりと笑う。うっわ、睫毛なっが。間近でしばたくそれを見つめていれば、自然と視線が絡み合った。
黒くて、まるい、キレイな目。
そこには、他の誰でもない、オレだけが映っていた。
ぞくりと背筋を込み上げる衝動に身震いした。欲望のままにさくらんぼ色の唇に噛みつく。オレがセンパイのナカを掻き乱すたびに甘ったるい嬌声が漏れるから、もっともっと聞きたくなって、何度も角度を変えながら呼吸を奪う。ぐちゅぐちゅと泡立つ音とオレの名前がない交ぜになった。
「っふ、ん……く、るす、ぅ……」
ああ、センパイ、くっそ可愛い。夢みてー。
「…………す、」
夢みてー、なんて思った瞬間に、センパイがぐにゃりと歪み始めた。間近にあったエロい顔も、生々しい舌の感触も、なにもかもが色あせたものになる。
「……る、す」
えっ嘘、マジで、ちょ、え、オイオイオイオイ、夢なら覚めないでくださいお願いします、あっ待って、お願いだから先っぽ、せめて先っぽだけでも挿れさせて!!!!
「――来栖!!」
ハッ、と目を覚ます。飛び起きたせいで心臓がイヤな早さで脈を打つ。
あれ、オレ……え?
「大丈夫か?」
なぜかオレと床に挟まれているセンパイ。心配そうに下から覗きこまれれば、センパイはおのずと上目遣いになるわけで。
「天使かと思った」
「……は?」
「あ、いや、なんでもないっす!」
ついうっかり口に出してしまったところで慌てて取り繕う。あぶねーただの電波だ。
横目で周囲を見遣る。床にはダンボールが倒れ臥していた。ガバリと開いた口からは大量の書類が吐き出されている。
ああ、そうそう、過去の資料とあわせて統計するってなって、センパイが棚の上のダンボールを取ろうとして、崩れて――こんなオイシイ展開になったワケか。
いやー、夢も大概アレだったけど。覚めて欲しくなかったけど。
これは、これで、イイ……ッ!!
「おい、来栖……いい加減、どけ」
俺に至近距離で見つめられていることが恥ずかしいのか、センパイはそっぽを向きながらそう言った。わずかに赤らんだ頬と骨の浮き出た首筋が丸見えだ。オレは内心で舌舐めずりをする。
「ヤダ、って言ったら?」
「……っ!」
センパイの耳元に唇を寄せて、低く、甘く。囁きながら、耳たぶを舌先でなぶる。オレの下でピクリと肩を揺らしたセンパイは、おそるおそるといったように横目でオレを見た。潤んだ瞳に加虐心が湧き上がる。
ホント、誘ってんでしょ。
ねぇ、センパイ?
夢で見たよりも赤い唇に喉が鳴る。食べたい、舐めたい、吸い付くして、蹂躙したい。狂気染みた思考を肯定してやれば、すぐそこに楽園が見えた。
センパイの唇にむしゃぶりつく。
そこではたと気づいた。
オレが今、口にしたのは、禁断の木の実ではなかったか、と。
警鐘が鳴る。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ――――――。
「――ッ、てぇ!!」
けたたましい音に驚き、ベッドから転がり落ちる。床に強打した腰と肘がジンジンと脈打つ。まるでここが現実であることを伝えようとして、躍起になっているようだった。
――現実?
「……………………んぁ?」
あれ、センパイは?
あるぇ?
え?
……………………え。
現実。
その二文字に涙が止まらない。自然と床が水浸しになる。嘘だろシネ。誰か、誰でもいい、誰でもいいから嘘だと言ってくださいお願いします土下座するから。
あの唇の感触が夢だったと思いたくねーーーーーーーーー!!!!!!!
濡れた床の上で転がり回る。うつ伏せになったときに、ふと、違和感を感じた。
しっかりおっきしてる息子にまた泣いた。
フラストレーションが限界まで溜まったオレは、いつもは放っておく息子を優しく労る。嘘じゃない、アレはきっと正夢になる。信じる力は夢に繋がるッ!
夢でのセンパイを思い返したら呆気なくイってまた泣いた。
右手でティッシュを数枚抜きながら、左手で携帯を確認。
【着信 折原 明人】
えっ、ナニナニ、センパイ、えっまさか正夢――。
【着信 西永 透】
【着信 高宮 彼方】
【着信 高宮 彼方】
【着信 折原 明人】
【着信 西永 透】
【着信 高宮 彼方】
……………………ん?
嫌な予感と、ナニかが迫ってくる気配がオレの首筋を撫でる。
【新着メールが一件あります】
《From:榊 獅狼‐サボりとはいい度胸だな、てめェ。今日の放課後覚悟しとけ》
朝 の 抜 き 打 ち 検 査 、 今 日 だ っ た !
オレの命日が決定した瞬間だった。
現実ってヤツは、どうにもオレのことが嫌いらしい。
【新着メールが一件あります】
「ん?」
《From:春野 すみれ‐駄犬ざまあ》
……………………殺ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!
(了)
―――――――――――――
安定のギャグ要員、来栖くんでした。ざまあwwwwwwwwwww
風紀委員の名前はその場で適当に決めたわりにはなかなかイメージ通りにいきました。ただ来栖だけ名前が思い浮かばないところはやはりギャグ。
西永やすみれちゃん視点からもSSを書こうかなあと思ったけどどう考えてもすみれちゃんはあかん。
というわけで無難に西永で何かしら書きたいです。片思いのときとか。でもこいつムッツリーニだから絶対書いてて気持ち悪い。
どれくらいって「ちょうわかる~」って脳内で佐保が深く頷いてるくらい→→→→「西永くんのプレイって、おれを買ってたオジサンと似てるんだよねえ」
ムッツリ全開・西永編もまたいつか忘れられた頃にあげたいと思うで候。
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