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俺は同性愛者でもなければ腐男子でもない、言うなればただのノンケだ。
全寮制の男子校に入学したのは、あの窮屈な家から早く出たかったからと、高校ではあまり女と関わりたくなかったから。
顔立ちには恵まれた方で、中学時代にはいろんな女から告白されたりもした、が。
付き合った彼女には束縛され、他の女からはストーカーまがいなことをされたりと、女特有のねちっこいしつこさにすっかり辟易してしまったのだ。
地元から逃げるようにここに転がりこんで早一年が経った。
入学当初は《ゲイ》や《ボーイズラブ》といった概念に価値観という価値観をぶっ壊され続けていたが、今では友人が面白がって持ってくる男同士のDVDを、煎餅でも食べながら真顔で見られるようになったほどである。あれ、これもしかして嫌がらせか?
初々しく純情だった俺はどこへやら。
同性愛に耐性はついたものの、俺は相変わらずただのノンケだった。
「あー、誰かおれのケツにバイブ突っ込んでくれないかな」
男同士のいかがわしいDVDを度々俺の部屋に持ち込む友人というのがコレだ。真性のマゾヒストなので基本的に物扱いでかまわない。
「五万くれたらなんでもしてやる」
「きゃー、なんかおれが払う前提になってるう。……ねえ、今なんでもって言った?」
「マジなトーンで反応すんな死ね」
「なんでもって言ったの折原くんじゃん。開こうよ、新しい扉」
開いてたまるかっつーの。
朝から平気でこういう話を出来るのが男子高校生の特徴なんだろう。しかしグラビアアイドルやAV女優の話ならともかく、話の方向性がさらに偏っていることについては目を瞑る。
「つーかワイシャツの隙間からキスマーク見えてんだよ」
「だって隠れないんだもん」
「ボタンとめろ」
「首絞まるからやだあ」
「わがまま言うな」
「じゃあ折原くんがとめて」
「……ちっ」
コイツのわがままはいちいちめんどくさい。なんで朝っぱらからヤローのワイシャツのボタンをとめなきゃなんねえんだよ。罰ゲームか。
付き合う俺も俺だが、風紀委員としての職務の一環だと言い聞かせ無心でボタンをとめていく。
……しかし、なんつーか。
「お前の首って無意味に絞めたくなるな」
「わあ、すごくバイオレンスな褒め方」
この細く頼りない首に手をかけ、少し力を込めてやれば、簡単に折れてしまうような気がした。
そこまで考えて、コレにキスマークをつけた人間と同じような思考をしているのかもしれないと思うと、少し気分が悪くなる。
基本的に、コイツ――佐保は生傷が絶えない。
もっともそれは本人が望んでのことなので、俺が知ったことでも、気にすることでもないが。
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