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「大体、今回遅刻しそーになったのだって、日直だったオレに“俺だったらもっと綺麗に黒板を消せる”とかなんとか言ったからだろーが!」
「前に先輩が『綺麗な黒板っていいよな』と言っていたからな」
「オレの方が綺麗だった!」
「俺の方が綺麗な上に丁寧だった」
「オレの方が綺麗で丁寧な上に――」
一体にこれはどういう口論なんだ。
「……なに、お前ら、黒板消し対決でもしてきたワケ?」
口を挟めば二人同時に勢いよく視線を向けられた。こっわ。俺が何したってんだよ。
遅刻の理由は喧嘩だろうなと予想はしていたが、黒板消し対決とは拍子抜けだ。コイツら顔はいいのに残念すぎる。主に頭が。
「センパイ、後でどっちの黒板が綺麗かジャッジしてくださいっす!」
「なんで俺が……」
「俺からもお願いします」
「だからなんで俺……」
四つの瞳にじっと見つめられる。強く言われると流されてしまうのが俺の悪い癖だ。流される、というより思考を放棄する、といった方が正しいのだが。
「わーったよ。分かったから委員長の方を見てみろ」
あの人は目だけで人間を殺せるんじゃないだろうか。
俺に言われて横目で委員長を捉えた途端、来栖と高宮は揃って黙りこんだ。賢明な判断だ。今回も委員長の怒りが爆発する前に抑えられたことに安堵する。いや、実際のところかなりギリギリだったけど。
ようやく静かになったところで委員長が再び口を切る。
「今日の見回りは折原と来栖で行け。会議室の施錠も頼む。明日以降についてはメールで知らせる。以上、解散」
来栖は既に高宮との口論を忘れたようにニコニコと笑っていた。見回りなんて面倒なだけなのに、どうしてそんなに楽しそうに出来るのだろうか。マゾヒストの佐保だってこんな嬉しそうには笑わない。
「みんなじゃあねえ~~~。あん、待ってよシロー」
「誰が待つか」
獅狼と呼ばれた委員長と春野先輩が仲睦まじく帰っていく。続けて西永も立ち上がった。
「今日は先に寮に戻るな」
「おう」
「高宮も。帰るぞ」
「…………はい」
名残惜しそうにする高宮を引っ張るようにして帰っていく西永。先輩風がびゅうびゅうだ。
そうして二人きりになった途端、来栖が急にそわそわしだした。俺を見つめたまま少しも動こうとしないので会議室の外に蹴り出す。ヤツを無視して会議室を施錠、ドアノブを捻って確認。よし、閉まってるな。
「おい、見回り行くぞ」
「センパイっ……、やっと二人っきりになれたっすね……!」
「ああそうだな。ちなみにお前の左隣にいる花子さんを合わせて三人だ」
「ドライなのか鈍感なのかビミョーなとこが好きっす……!」
駄目だコイツ。会話を成り立たせようっつー気概がどこからも感じ取れねえ。
「あっ、センパイ置いてかないで……!」
――必死に俺を追いかける来栖の今にも泣きそうな顔は嫌いじゃねえけど。
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