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それから佐保は、ふと携帯を覗きこんだかと思うと、「誘われちゃったあ」と言って西永が来る前に教室から出て行ってしまった。風紀委員を前にしてサボるとはいい度胸だ。しかしアレは引き留めるだけ無駄なので何も言わない。
入れ替わるようにして西永がやってきた。
「佐保は?」
「サボり」
佐保の姿がないことを確認すると、俺の隣、佐保の席に座った西永。隣にいてこれほどしっくりくる人間はあまりいない。
「昨日の見回りはどうだった?」
「あー、別に違反者は誰もいなかったけど。それよりペア替えてほしい。高宮がいい」
昨日の来栖とのことを思い出して机に突っ伏す。「委員長に頼もっかなー」言葉と呼気がくぐもる。
「なんで高宮なんだ?」
「だって変なことしねえし」
「……それだと来栖に“変なこと”をされたように聞こえるが」
「まあ、間違ってはねえわな」
西永が相手だと愚痴るようなスタンスになってしまうのは、俺なりの甘えなのだろう。コイツは話を聞くのがうまく、適度な相槌と会話を入れてくれるので何かと話しやすい。悩みなどをあまり他人に相談しない俺がポロッと零してしまうほどだ。
それほど信頼しているということでもある。
「……?」
急に黙りこんだ西永。疑問に思ってそちらを向けば、俺のことを見ていたらしい西永と目があった。
「どうかしたか?」
「いや……そういうことなら俺から来栖に注意しておこう」
「ふは、そりゃあ助かる」
「そうか」
西永が目を細めて笑う。つられて俺も笑ってしまった。
――これで来栖が大人しくなってくれればいいのだが。
「誰かに何かされたら俺に言えよ」
そう言って、西永は俺の頭をポンポンと撫でる。「ガキじゃねえんだから、」くすぐったくなってすぐに振り払う。西永は一瞬不服そうにするが、それ以上は手を出してこなかった。
「俺に本気で手を出すような馬鹿はいないだろ」
いくらこの学園がホモの巣窟とはいえ、そこそこガタイのいい俺に手を出そう、襲おうなどと考えるホモ以前の性格破綻者なんて見つかりっこないだろう。
西永は俺の言葉を否定するようにやんわりと首を振った。
「お前は意外と力がないし、すぐに諦める癖があるから心配なんだ」
「力がないは余計だ」
「握力が三十もないくせにか?」
「それは機器が壊れてたんだっつーの」
「さて、どうかな」
「……西永、しつこいぞ」
珍しく突っかかってくる西永を押しのけるようにして会話をぶったぎる。
「心配してくれんのは嬉しいけど、万が一にもお前の杞憂で終わる夢物語だ」
俺はそれだけ言って再び机に突っ伏し、それ以上の追撃を避けた。
「そうだといいんだけどな」
――脈絡が繋がっていないそれは、いやに穏やかな声で紡がれていた。
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