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助かった、と思うよりも先に、内臓にかかった圧力に思わず吐きそうになる。おっえ。どっちにしろ死にそう。
「何してんだ、てめェ」
地を這うような唸り声がすぐ耳元で聞こえた。聞き覚えがありすぎる声だ。
「いいんちょ……?」
顔だけを後ろに向ければ、眉間に皺を寄せ、お怒りになっているご尊顔がそこにあった。
「ボケっとしてんなアホが」
……何故こんなにも機嫌が悪いのだろう。
「すいません、助かりました。ちょっと体調が悪くて……その……そろそろ放してください」
未だ俺は委員長の腕に捕らわれていた。後ろから抱きすくめられているような状況だ。身じろぎをしても微動だにしないのは、体調が悪くて力が出ないだけであって、断じて俺に力がないというわけではない。
窺い見るように下から委員長を見つめれば舌打ちをかまされた。だからなんで機嫌悪いのこの人。
あまり関わりたくないものを挙げるとするならば、第一に機嫌の悪い委員長、第二に機嫌の悪い委員長、である。機嫌の悪い委員長は何をしでかすか分かったものではない。
「……放してくださいってば」
よって一刻も早く傍から離れたいのだが。
「――助けてやったのにその態度はなんだ、折原」
一段と低くなる声。腹部に回されている手が身体をまさぐるように動いて、「っ……!」思わず腰を泳がせてしまった。
「委員長……!」
「へえ、そんな顔も出来んのか」
「お願いですから……」
頭も視界もくらくらとしているのは目眩だろうか。放してくださいとは言ったものの、既に一人で歩けるか分からないほど全身から力が抜けていた。今こうして立っているのも、おそらく委員長の支えがあってこそだろう。
「――連れてってやるよ」
「……は?」
「保健室まで連れてってやるっつってんだよ」
「え……っ、うわ!!」
浮遊感。
気付けば俵担ぎにされていた。
――端から見ればなんて間抜けな光景だろうと思う。もっとマシな運び方はないのだろうか。しかし委員長に文句を言う度胸も気力もなく、俺はただ無言で委員長の背中にしがみつく。
大きい背中で羨ましい、とか。
いい香りがするな、とか。
およそ本人に言えないようなことばかりを考えていた。
ホモっぽい思考に合掌。
今日の俺は確実に何処かがおかしかった。
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