アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
17
-
――起き上がろうとしたのだろうが。
「あらら~」
まるで見えない何かに押し戻されるように、再びパタリと床に仰向けになった佐保。目をパチパチとさせながらすがるように俺を見た、ので音速で逸らす。
「折原く~ん」
「……一人で遊んでろ」
「え、折原くんにはこれが遊んでるように見えるの? 大丈夫? 眼科がいい? それとも脳外科?」
「なんの話だっつうの」
「いたいいたい、いたいよ折原くん」
「痛いのが好きなんだろ?」
「そうゆうセリフはベッドの中で言ってほいたいいたい」
横たわる佐保の腕を思い切りひっぱって上体を起こすのを手伝ってやった。コレはただ座っているのもつらいのか、無遠慮に寄りかかってくる。
「重い」
「俺が女子高生だったら傷付いてたよ。言葉はナイフなんだよ折原くん」
「うぜえ」
「ぐさっ」
線の細いナリこそしているがコレだって立派な男子高校生なのだ。ここにきて最終手段を俺の脳内から切り捨てる。もしものときは佐保ごと切り捨てることにした。
先程からどこかの痛みを主張している佐保。しきりに腹部を気にしていることに気付き、一思いにヤツのワイシャツをめくった。もともとはだけていたので露出面積はあまり変わらない。
「ちょっ、折原く、」
「…………」
どういうことだと佐保を睨み付ければ、「プレイだよ、プレイ」コレはいつも通りにへらへらと笑いながら、やんわりと俺の手を振り払った。
ヤツの腹には、いつも以上にひどい痣――それもキスマークなどという生易しいものでない――が、無数に刻まれていた。
かなり強い力で蹴られるか殴られるかでもしなければ、こんなにひどくはならないだろう。
「今回のデートの相手はやけに激しくてさあ」
へらりへらり。にへらにへら。
――佐保の笑みは、自分の底を読ませないようにするための手段の一つだった。
俺は踏み込まれたくないと暗に伝えてきている相手の心を土足で踏み荒らすような熱血キャラでもないし、まして「俺がお前を救ってみせる」なんて空言を吐き捨てるような人間とは対極にいた。
心が惑うくらいなら流されてしまえばいい。痛みや苦しみを感じるくらいなら閉ざしてしまえばいい。
俺はもう何もしたくなかった。
期待も、努力も、信頼も。
その方が楽だからだ。
傷付かずに済むからだ。
「――なにがデートだ」
「デートはデートだよ、折原くん」
「ふざけんな」
「ふざけてないよ」
でもな、佐保。
どうしてか、お前から目を逸らすことが出来ないくらいには、俺はお前のことが好きらしい。
まるで自分に刻まれた傷を見ているようでときどき胸が痛くなるのに。
逸らしたいのに、逸らせない。
――所詮、他人のことなのにな。
「ふざ、けんな」
喉が熱くて、うまく声が出せなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 51