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――俺には九郎の他に、もう一人兄がいる。
父親がそうさせたのか、もともとの気質なのかはわからないが、長兄は何でも出来る優秀な人だった。
父親はいつも長兄しか顧みなかった。
母親は父親の愛情を得ようとするばかりで家庭を放棄し、九郎は常にあちらこちらを歩き回っていて、気づけば勘当されていた。
俺は俺で身体的にも精神的にも幼く、両親が俺に見向きもしないのは俺に原因があるからだと思い込んでいた。
長兄に負けないくらい優秀になれば、父親も、母親も、俺を認め、愛してくれるだろうと思った。
だから行儀のいい子供になった。勉強も死ぬほど頑張って、駆けっこも常に一番で。俺は子供が手に入れることのできるなにもかもをかき集めた。
誰もが俺を羨んだ。
父親は依然として長兄だけを気にかけた。
母親は相変わらず父親を追いかけてばかりだった。
何をしても無駄なのだと。俺の本当に欲しいものは絶対に手に入ることはないのだと。
そのことに気づいたのは、いつだったか。期待するから失望するのだと気づいたのは、諦める癖がついたのは、いつだっただろうか。
それからだ。
俺が何も為さなくなったのは。俺が何も考えなくなったのは。
俺が何も、愛さなくなったのは――。
寝返りをうって、その腰の痛みで目が覚めた。一晩では拭えきれなかった倦怠感が俺を襲う。最悪の目覚めだ。
……だっる。
しばらく布団の中でゴロゴロしていれば、ふとした違和感を感じた。昨夜の記憶が鮮明に思い返されるとともに、ちゃんと服を着ていることと、いつの間にか自分の部屋に戻っているという、矛盾にも似た事実に気づいてしまう。
西永がやってくれたのだろうか。そこまで考えたところで、くだらない、非生産的な思考だったとすぐさま打ちきる。自分のためにも、今は何も考えない方がいい。
そうして俺はもう何度目かもわからない保身に走るのだ。
いまいち学校に行く気が湧かないままのそのそと起き上がる。ベッドから足を下ろし、下半身に響く痛みに逆らうように強く踏み込む。踏み込もうとして、力が入らなかった。
「ってえ……」
ぽすり、再びベッドに逆戻りしてしまった。優しく俺を包み込んでくれる布団ですら今は憎らしい。ベッドの上を這うようにして定位置に戻る。
とりあえず西永に対する無言の抵抗くらいはしてやろうと学校はサボって今日一日眠りこけることにした。グッバイ皆勤賞。
布団を被り、目を閉じる。
嫌でも昨日の出来事が甦る。
西永の冷たい指、熱く乱れる吐息、生ぬるい舌の感触、そして俺を貫く――。
「…………」
ハロー皆勤賞。やはり意地でも学校に行くことにした。
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