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浮 気 癖 と 嘘❻
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束の間の沈黙。
耐えきれなくて、俺は笑い出した。
「冗談キツいわ、フジくんでもそんなふざけたこと言えるんやな」
「嘘だよ、バレちゃったか」なんていう言葉を期待した。
「俺も冗談でいてほしかったけど。嘘じゃないんだよ」
「いや、信じられん。それならなんで落ち着いてられんの」
「……レトさんは俺が嘘つくようなヤツに見える?」
ふいに風が吹いた。
ざわざわと騒がしくなる木々に比例して、嫌な予感が募ってくる。
フジくんはいよいよ真顔になるもんだから、
ついに笑えなくなった。
「………キヨはね、俺が隣にいるのにずっとうわの空だった。
もしかしたらって思って聞いたら
やっぱりね。レトさんのことだった。」
―――キヨはレトさんのことが本当に好きだった。
信じられない。
キヨくんが、死ぬ?
しかも好きなのは本当は俺?
立ち尽くしていると ため息をついたフジ君は携帯を取り出し誰かに電話をかけた。
「…あ、もしもし。キヨ?」
………キヨ君!
「……キヨさあ、どうしてレトさんを振ったの?なんで俺にしたの?」
フジ君はそう言うと、俺の目の前に来て
「なっ、なんや…」
自らの携帯を、俺の耳に当てた。
すれば、聞こえてきた言葉。
『……なんだよ、前にも言ったじゃねえか。
レトさんを悲しませるわけにはいかないって……
どうせ、死ぬから
レトさんには他にいい人がきっといる』
この声はキヨ君だった。
いつも愛していた声。
いつもうるさかった声はか細い。
だけど狂いはなかった……。
俺がなにか言い出すのを避けるためか、フジ君はそこで通話を切った。
「ね、本当でしょ?」
未だに信じられなかった。
だってフジくんが、飄々としているから。
「フジ君…元気そうだけど。なんで?キヨくんが好きなんでしょ?」
忘れたくても忘れられないここでの出来事。
忘れられるならなんでもできる最悪な日。
「好きだよ?」
「ならなんで……」
俺に背を向け、空を仰いだフジ君は答える。
「俺ね、好きな人はたくさんいるんだよね
ヒラも、こーすけも、うっしーも。
皆俺がお願いすればさ、尽くしてくれるんだ。
ここであったこともさ、俺がキスしてくれなきゃ死んじゃうって言ったら
簡単にしてくれたんだよね。
レトさんと別れるなら、俺を愛してよって言ったら暗い顔でオッケーしてくれたんだ。
…あぁ、そんな怒った顔で見ないでよ。
もちろんキヨも好きだよ?」
「お前、ふざけんなや!!」
カッとなって胸ぐらを掴む。
フジくんは顔色一つ変えずに笑ったまま。
気味が悪くて バッと手を離した。
「でも、もったいないよ。
せっかくキヨはかっこいいんだから、最後ぐらい俺と一緒になってもらわないと」
「キヨ君はどこ?」
これ以上聞きたくない、返答する余裕はない。
「………言いたくない、って言ったら?」
頭に血がのぼるのが分かった。
キヨくんはこんなヤツに振り回されてたってことか。
「なら、俺が自分で捜す。
もう関わらないで、フジ君」
踵を返し、公園から出た。
一目散に向かった先は…病院。
・
・
まだ続きます
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