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旭が同性愛者だと気づいたのは、高校生の時だった。
友達が彼女を作って学生生活を楽しんでいる中、旭はなかなか女性に興味を持てなかったのである。最初は、そういうものだと思っていた。女性が苦手というわけではない。実際にクラスメイトの女子とよく話していたし、共通の話題があれば楽しいと感じていたことを覚えている。ただ今は部活や勉強で恋愛感情が湧かないだけで、そのうち彼女を作り、結婚していくのだろうと。そう思っていた。
しかし、なんとなく参加することになった男友達とのAV鑑賞会で、旭ははっきりと気づいてしまった。AVに出ている女優に興奮しているのではなく、男優に対して興奮していることに。男優の顔は映っていないが、割れた腹筋や、女優を抱く腕、自分のものとは違う大きくそそり勃ったものにドキドキした。それに、気持ち良さそうに喘ぐ女優が羨ましく感じた。もし、自分が女側になれたのなら。でも、女優のようにふくよかな胸はないし、下半身は男優と同じものがついていて。
(あ、そっか……俺は他の人とは違うんだ)
勿論、このことは誰にも言えるわけがない。膨らみを持った下半身に友達からちゃかされたが、その時は一人だけ違う性癖が恥ずかしくてたまらなかった。
だいたいその頃から旭は友達やクラスメイト、先生まで男性と意識し始めた。それはただただ苦しいの連続で。とうとうゲイ動画を見て抜いたり、お尻って気持ちいいのかな、と思ったり、すべての思考が汚れていて気持ち悪かった。
そんな性癖を隠してきて数年──。
旭は成人を迎えた。そして、その時から決めていたことを今日、決行しようとしている。それがゲイバーに行くことだ。ようやく新しい扉を開いて解放される。扉の向こうには、きっと自分と同じ人たちがいて。どんな人がいるのだろう。素敵な出会いがあるといいな。高まる気持ちとともに不安もあり、旭はバーに辿り着くまで複雑な気持ちであった。
サンクチュアリ──目の前にある看板には、そう書かれている。
旭はその看板を見て意を決すると、思い切って扉を開いた。
店内はバーということもあって照明が暗めな雰囲気だ。しかし、そのわりにはテンポのいいBGMとそれなりにいる客とで賑わっている。比較的に若い人が多く、女性もいた。同性でも異性でも、特に問わないというふうに色んなグループが目に入ってくる。
旭は居酒屋はあれど、バーなんてものは初めてで、大人の雰囲気にドキドキした。濃い絡みはないものの、肩や腰を抱いているカップルもいて見てはいけないような気持ちになる。エッチな動画は見てきたけれど、まだまだ子供っぽくて恋愛初心者の旭には刺激が強めだ。それに、旭はキョロキョロと店内を見渡していて、初心者だということが丸出しである。
(一歩踏み出すにはまだ早かったかな。いや、このままでは駄目だよね……)
入口付近で自問自答を繰り返し、勇気を振り絞るかのように肩掛けカバンの紐をぎゅっと握った。とりあえず、カウンターに行って飲み物だけでも。そう思っていると、旭の元へ近づく人影があった。
「見かけない子だね。初めて?」
二人の男。外見の特徴は、一人は黒髪の綺麗な顔をしている人で、一人は金髪の遊びなれていそうな人といったところだろうか。どちらも旭と同じくらいの年齢のように見える。そして、声をかけてきたのは黒髪の男のほうだった。
こく、と旭が頷くけば、二人の表情がパアっと明るくなり、腕を掴まれて。
「一人だったら、俺らと一緒に飲む? ほら、こっちこっちー!」
「あっ、えっと……」
「向こうで友達と飲んでるんだよ。たくさんいるからきっと楽しいし。遠慮しないでおいでよ、歓迎する」
「じゃあ、行きます……」
右も左もわからないから流れに任せた──そんな感じで二人についていくと、旭はカウンター席とは反対の奥のソファー席へ連れていかれた。
ソファー席には元から何人か座っていて、おそらくこの辺りは先程言っていた二人の仲間ではないかと予想できる。こちらも肩を組んでたり、膝に座って抱き合ってたり、怪しい雰囲気に旭の心臓が跳ね、咄嗟に視線を逸らす。新たに旭が加わることになり、注目も集めてしまって余計に旭は気まずく感じた。
連れていかれるがまま、空いているソファーにちょこんと座ったものの、ドキドキが離れない。それは期待とかではなくて、ここにいるのはまずいのではないか、という不安が過ぎったからだ。ここは少し空気が濃厚過ぎるような。みんなして年齢は近そうだが、大人っぽくて旭との差が歴然としている。
ただ知らなかっただけで、こういうことは普通のことなのだろうか。
「名前、何ていうの? 俺は明で、こっちは健人」
「旭、です」
「旭! 仲良くしよーねー!」
さっき話しかけてきた二人組──黒髪の男は明、金髪の男は健人というようだ。
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