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「旭くん、先にシャワー浴びてきていいよ」
「い、いえ! ここは椎名さんがたくさんお酒を浴びてるので先にどうぞ!」
ベッドについて、椎名は完全に見て見ぬふりだった。
それが普通の反応だろう。意識をしてはいけないと旭も重々わかっているが、どうしてもチラッと視線がベッドに向いてしまう。と、ここで椎名が思わぬ爆弾を投下してきた。
「じゃあ、一緒に入る?」
「えっ!」
ぶわっと身体が熱くなる。まさかの事態に旭は思いっきり椎名を見返してしまった。
「はい。今、困ったでしょ。冗談だよ、少しだけ意地悪言っちゃったかな……俺のことは気にしなくていいから、先に行っておいで」
くすくす、とジャケットを脱ぎながら笑う椎名。これが大人の余裕か。
顔を真っ赤にさせた旭は、むうっと頬を膨らませる。椎名さんとならいいです。なんてどこかで思っていたことを口にしてやりたいところだが、そこまでの勇気はなかった。
余裕がうんぬんかんぬんは諦めるとして、ここは椎名の言うことに甘えておこう。
「あ。あと服のことだけど、さっき相談したらなんとかしてくれるみたい。一旦、預けてみるね」
「ありがとうございます」
そうやって、旭が浴室へ向かう一歩を踏み出した瞬間だった。
今までなんにもなかった身体に異変を感じ、動けなくなってしまった。旭はよくわからないまま、崩れ落ちるように床へうずくまる。
「旭くん? どうかした?」
「身体が……」
熱い。ベッドを見た時のドキドキとはまた違って、バクバクとこのままだと心臓が爆発しそうなのではないかと思うくらいに脈拍がひどかった。血液も循環して主に下半身に集まっていくのがよくわかる。それに、一番怖かったのは衣服が擦れるたびに、とてつもない快感が襲ってきたことだ。
なんで急にこんなことになっているのか理解出来ない。しかも、椎名の前で。恥ずかしくてたまらない。
「大丈夫?」
「あっ……!」
いつの間にか近くにいた椎名が旭に触れて、変な声を出してしまう。咄嗟に手で口を塞いだが、もうすでに遅い。
その色のある声と、旭の火照った顔とで、椎名もなんとなくこの状況を把握出来たようで。
「アイツらに、なにかおかしなことされた?」
「なにか……えっと、飲み物を飲んだくらいしか……」
「ああ……それになにか入れたんだろうな。やけに素直に渡してくるなと思ったよ……やられた」
椎名が困った表情をしている。旭はそれが嫌だった。迷惑かけてばかりで、情けなくて。
「ごめんなさい……」
鼻がツンと痛く、振り絞って出した声は震えている。視界も涙でぼやけてきて、どうしようと思った時にはぽたりと雫が床を濡らしていた。一度、頬を伝ってしまうと止まらない涙。我慢しようと歯を食いしばったが、どうしようもなかった。
──泣かれてもめんどくさいじゃん?
明から言われた言葉が頭を過ぎる。もしかして、椎名もそう思っているのだろうか。そう思っていたなら、明の時よりかなりショックかもしれない。
旭は椎名に嫌われたくない一心で、出てきた涙をすぐさま拭ったり嗚咽を隠したりと必死に平静を装った。すると、ぽんと頭の上に椎名の手が乗って。
「本当は抱き締めたいところだけど、服が濡れちゃってるから……でも、謝ることはないんだよ。旭くんは悪くない」
その優しさがずるかった。
旭は知らずのうちに椎名へ手を伸ばしていた。濡れた感触がするとかどうでもいい。椎名に触れたかった。
温かい他人の体温。ぎゅうっと抱き締める。椎名さん、椎名さん。旭は心の中で椎名の名を呼び続けた。そうしていると、やがて椎名の手が旭の背中へと回ってきて、目眩がするような喜びを覚えた。
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