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『あれ、旭くんから電話きちゃった。俺からかけたいから、かけ直す。待ってて』
「えっ」
と、理由がよく理解出来ないまま、旭からのコールはすぐに切られてしまった。しかし、そのあとすぐ椎名の予告通り、旭の携帯から着信音が響いて。
「もしもし」
『もしもし。こんばんは、旭くん』
「こ、こんばんは!」
椎名の声だ。耳が幸せである。椎名からメッセージが来て、電話も出来て、なんて日だろう。このまま眠ったら死んじゃうのかな、と乙女っぽい妄想は止まらない。
旭がきゅんきゅんと心を揺らしていると、椎名は話題へと入る前に会話を中断させる。
『あ、ちょっと待って』
「? はい……?」
どうしたのだろう。その理由はすぐにわかった。
『にぼしー、おやつはさっきのでもう終わりだよ?』
椎名がそう言うと、後ろのほうから『なー』という鳴き声が聞こえてきて。
にぼしというのは椎名が飼っている猫だ。黒と白の毛が混じっている子で、椎名がよく写真を送ってきてくれる。美人に撮れた写真や、はたまたブサイクに撮れた写真やら。撮っている椎名も楽しそうで、旭にとって一つの癒しになっていた。そして、時々こういうふうに電話での登場もある。
さっきまでおやつあげてたんだと思うと可愛らしく思えて、旭は思わずくすくすと笑い声を上げてしまう。
「にぼし、おやつを欲しがってるんですか?」
『んー、そうそう。俺が家にいない間はたまに姉貴が見に来るんだけど、甘やかして帰っていくからさ。重くなってきたし、おやつ減らしてちょっとしたダイエット中なんだけど……』
「だけど……?」
『おやつくれって膝の上から動かないんだよね。重いし、この時期だから暑いし……』
「それは……大変ですね」
でも、椎名の人柄から、にぼしがやってくると優しく撫でているんだろうなと想像出来る。そういえば、撫でている写真も送ってきてくれたことがあって、その写真のにぼしは気持ち良さそうにしていたっけ。
にぼしの気持ちが凄くわかる。そして、椎名にいつでもくっつくことが出来るにぼしがちょっと羨ましくなったのは内緒だ。
『甘えてくるのは可愛いけどね。ついあげたくなっちゃうから困るよね。……あ、拗ねてどっか行った』
にぼしが離脱したことにより、椎名は『話題を逸らしてごめんね』と先に謝って本題へと戻す。
『それでどこに行こうか。最近、旭くんばかりに甘えて言わせちゃってたからさ……今度は旭くんから誘われる前に俺から言わなきゃと思ったんだ。好きなところに付き合う』
「好きなところですか……椎名さんとなら本当にどこでも……あ、」
『ん、なになに? どこか思いついた?』
どこでも。それは事実だが、ふと旭の頭に思い浮かんだ場所があった。そこは友達が行くと言っていて、いいな、面白そうだな、と感じた場所だった。
「えっと……友達がナイトサファリに行くって言っていて、気になってたんです」
『ナイトサファリ? 旭くんって、そういうの興味あるんだ? あ、でもそうか。前に水族館に行った時にイルカやペンギンを見て、すっごく嬉しそうだったよね』
「うあー……待って、今のなしです。普通にご飯行きましょう。そっちのほうが椎名さんも退屈しないだろうし」
でしゃばりすぎた。
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