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椎名と行った水族館は、とても楽しかったのを覚えている。それも今までのデートの中でかなり上位の方だ。それにしても、椎名に見透かされているようで恥ずかしい。さらに椎名のことを考えずに発言してしまったからと旭が言い直すと、椎名はふふっと明るく笑いながら言ってくる。
『え、行こうよ。動物園なんて子供の頃以来だけど、面白そうじゃん。というか、旭くんが楽しそうなら俺は満足だし』
「本当にいいんですか? 椎名さん優しすぎでしょ……」
『え、そう? このくらいのことは当然。じゃあ、いつ行くかだけど……』
結果、旭は椎名とナイトサファリに行くことになった。
その日、大学が夏休みの旭はバイトが午前中までだと話すと、椎名も溜まった代休消化だと午後に半休を取ってくれた。だいたい仕事終わりに会うことが多かったのでスーツ姿ばかり見てきたが、今日は私服姿が見られそうだ。そして、次の日はお互いに完全にオフの日。期待をしていない、と言えば嘘になる。
そして、落ち合う約束をしている夕方となる。落ち合ったあとは近くのファミレスで軽食をとり、ナイトサファリが開催されている動物園へ向かう予定だ。
旭が待ち合わせ場所に行くと、すでに椎名が待っていた。ポロシャツにパンツの裾を折って足首を出しているというシンプルなスタイルなのに、お洒落だと思ってしまうのは、元々がすでに出来上がっているからだろうか。何を着ても、童顔のせいで子供っぽくなる旭とは大違いである。
「椎名さん!」
「お。来た来た。見て。今から行くファミレス、桃フェアやってるんだって。食べる?」
到着して早々、椎名は旭へ携帯の画面を見せてきた。画面には椎名の言う通り“桃フェア”の文字。パフェにアイス、パンケーキと五、六種類のスイーツが載っていて美味しそう。
「わあ、食べる!」
会えた嬉しさの勢いで旭が元気良く返事を返せば、椎名も嬉しそうに笑ってくれた。それからファミレスで早めの夕食と旭はパフェ、椎名はアイスと、デザートを堪能して動物園へ向かう。
動物園へ着く頃には日もだいぶ落ちて綺麗な夕焼け空になっていて、園内にはイルミネーションが点灯されていた。さまざまな種類の動物型イルミネーションが可愛く、ナイトサファリまで時間が余っているので旭と椎名はゆっくりと歩いて眺める。
旭の想像ではイルミネーションというものは平坦で装飾のイメージで止まっていたので、リアルな動物の形や色と模様を表現しているのには正直驚いた。これは子供が喜びそうだ。来園者が次々と足を止めているのも納得出来る。
「今のイルミネーションってこういうのなんですね。想像してたより本格的。わ……キリン可愛い……」
「えっ、旭くん!?」
いつの間にか旭も虜になっていて、立体的なキリンのイルミネーションが目に入った瞬間、なにかのスイッチが入ってしまった。もっと近くで見ようと本能が働き、椎名を置いてキリンのところまで駆けていく。
椎名さん、見て!
そう振り返ると、椎名との距離がある程度離れていることに気づき、やってしまったと反省した。確か水族館でも同じようなことが……。
追いついた椎名は怒ってはおらず、逆にニコニコしながら旭へ近づいた。時々、笑いを堪える仕草をとるが、まったく意味を成していない。
「ふふ、楽しそうだね。いきなり走るからびっくりした……ふは、若い子って本当に元気。ねえ、写真撮る?」
「椎名さん、笑いすぎ……」
「ごめんって。可愛かったからさ」
「一人ではしゃいでしまって恥ずかしいです……」
あんまり笑われると恥ずかしさが際立ってくる。椎名は好きな人だから余計に。旭はみるみるうちに頬を染めていった。
(京介さんには子供に見えているんだろうな……)
そして、ふとそう感じてむうっと口をつぐむ。その姿が椎名には旭を怒らせたと思ったらしく、再び謝ってきて。
「本当にごめんね。機嫌直して? でも、俺もこう見えて、旭くんといる時はドキドキしてるんだけど……心臓の音、聞いてみる?」
ぎゃあああ。
椎名に手を掴まれたかと思うと、椎名の胸にあてられて旭は心の中で叫び声を上げた。勿論、パニックになっている旭に椎名のドキドキは伝わるはずもなく。
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