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【番外編】金と黒 7
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仲間での集合は、週に二回ほど定期的に行われている。仕事の都合で毎回全員でというわけにはいかないが。だから、明が参加しない日もあるし、健人がいない日だってある。そして、かわい子ちゃんを毎回釣っているってわけでもなかった。日によって気まぐれ。長く続いているのは自由に出来るからであろう。
しかし、終わらないと思っているものにも、いつか必ず終わりがくる。その時は健人に好きな人がいて、想いを断ち切る時ではないかと明は思っていた。健人がそこにいるから付き合ってあげている。でも、終わるのは怖い。
ぐちゃぐちゃになっていく葛藤が明を少しずつ壊し始めていた。前に進んで、健人についていくことしか出来ない明は、そのひび割れた欠片を落としていることに気づかないまま、いつものようにバーを訪れる。
「ねえ、一人で来たの?」
「お名前はなーにー?」
今日はかわい子ちゃん狩り。健人も来ていて、一緒にカウンターにいる小柄な子に話しかけていた。
「凛です。ご覧の通り一人寂しくやってますよ」
栗毛のくせっ毛で、ぷっくりした唇がおしとやかな笑みを作って。健人の好きそうな可愛い可愛い子猫ちゃんだ。
はい、この子で決まり。
明は凛に向かって爽やかに微笑む。
「そっか。俺は明で、こっちは健人。グループで飲んでるんだけど、もし良かったら一緒に飲まない?」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「よっしゃあ! よろしくーっ!」
すんなりと釣れて健人も嬉しそうだ。本当のところ複雑ではあったが、いちいち気にしていてはやっていけない。
仲間が集まっているソファー席まで案内すると、みんなの注目が集まる。今日はほぼ全員が集まっていて、その中に祐馬もいた。祐馬と視線が合うと、祐馬が手を振りながら笑ってきて、明は思わず目を逸らした。二人きりで会いたいと言われてから何度か集まりがあったが、明の中で気まずい状況が続いている。
祐馬の件は見なかったことにして凛をソファーに座らせると、健人の視線が飛んできた。譲れ……ということだろう。特に今日は顔が好みの子であることだし。
仕方ないな、と健人を凛の隣に座らせて、明は凛に問う。
「飲み物どうしようか。苦手なものとかある?」
「いえ、特には……ってお酒を知っているってわけでもないのですが」
「わかった。うーん……じゃあ、凛っぽいカクテルでも貰ってこようかな」
その代償として、明は凛の頬を指先でいやらしく撫でた。みるみるうちに凛の顔が赤く染まっていく。こういう反応を見るのは悪くない。
すると、ひゅーっと健人から口笛が鳴った。
「明、おっしゃれー! 良かったな、凛!」
一人でカウンターへ戻り、そこにいたバーテンダーにカクテルを注文した。ついでに健人のと自分のも追加で注目する。
そして、作って貰っている間、カウンターに寄りかかって出来上がる様子を見ていると、後ろから腕が回ってくる。
「明……なんでさっき無視したの?」
祐馬だ。
祐馬は、ぐっと下半身を明の尻に押しつけ、カウンターに置いてある腕をなぞるように撫でて。
「……祐馬。ここではやめてってずっと言ってる」
びくんと身体を震わせた明は祐馬のほうへ向いて、軽く胸板を押した。まだ祐馬の腕が離れないが、密着させているよりかは良かった。
二人きりで会いたいと言われて以降、祐馬と普段通りかと思いきやそうではなかった。会えば、必ずそのことを思い出させるように口説かれる。たとえ、明が断ってもだ。明が気まずいと思っているのも、これが理由だった。
祐馬は明の押す力が弱いのを見計らい、明を抱き寄せては首筋に顔を埋める。
「俺は諦めないよ。明がそのうちいいよって言ってくれるまで」
「言わない。言ったでしょ、仲間で贔屓はしない。けど、その代わりにハプバーでは好きなだけ抱かせてあげる……飲み物、持ってくれる?」
明は再び祐馬の胸板を押した。今度は突き放すように強く。ちょうど注文した酒も順々とカウンターに出てきていて、抱きつかれる前に明と健人の分を祐馬に持たせた。
そして、最後に桜色の可愛らしいカクテルを手に持つと、明は祐馬を置いていくように歩きだす。
「明、迷惑だと思ってる?」
「だいぶね」
「ちょっと表情に出るようになってきた」
しかし、祐馬の一言にハッとして振り向いてしまった。祐馬はなぜか嬉しそうな表情をしていて。
なにそれ、知らない。見ないで欲しい。入ってこないで。揺れる瞳の先で、ミシ……となにかに裂け目が入ったような気がした。
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